【よくある間違い】平均気温の短期的ノイズと長期的傾向

  気候変動否定派(懐疑派)がよく「××年から温暖化していない」という主張をします。  近年よく話題になる「地球温暖化ハイエタス」については別の記事で説明するとして、この「短期的な気温の上下」と「長期的な気温の変化の傾向」を、知ってか知らずか混同して地球温暖化を否定したり、疑問を投げかける人やグループは後を絶ちません。   「天気」と「気候」の違いについての記事で説明した通り、天気は短期的な気…

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温暖化が東南アジア諸国の生産性を著しく低下させ、労働者の健康問題を引き起こす

  先日、地球温暖化が原因で2100年までに世界の一人あたりの国内総生産が平均で約23%減少するという研究結果についての記事を書きましたが、近頃発表された英リスクコンサルタント会社のベリスク・メープルクロフト社の新しいレポートによると、温暖化が原因で職場の熱ストレスが高くなり、熱中症などによって東南アジア諸国の主要都市で生産性が2045年までに平均16%低下するそうです。 2045年の熱ストレ…

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135年間の世界平均気温の上昇を30秒で見てみましょう

  NASA(米航空宇宙局)のゴッダード宇宙研究所(GISS)によると、地球の平均気温は、1880年から2013年の134年間で約0.8℃上昇しています。   「たった0.8℃やん」と感じるかもしれませんが、平均気温の0.8℃と、1日の中とか、季節によって温度が違う、というのとはわけが違います。世界の1年間の平均気温が0.8℃上昇するということは、そういう1日の中でや季節ごとの気温の変化、地域…

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温暖化が原因でペルシャ湾岸の猛暑が人間の許容限度を超える可能性

  今後、気候変動対策を講じることなく、これまでと同じように温室効果ガスを排出し続けると、今世紀末までにはペルシャ湾岸地域の極端な気温と湿度が人間の許容範囲を超え、人が住むのに適さない環境になる可能性が高いという研究結果(Pal & Eltahir 2015)が、「ネイチャー・クライメート・チェンジ」のオンライン版に掲載されました。   人間の体は、汗をかき、それが蒸発する際の冷却作用…

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地球温暖化が原因で一人あたりの国内総生産が減少

  気候変動は、経済の問題でもあります。平均気温が上昇を続けると、熱波や寒波、干ばつや豪雨などの極端な気象事象が起こりやすくなり、農産物の生産量や仕事の効率に影響を与え、経済的損失に繋がります。   このまま平均気温の上昇が続くと、2100年までに世界の一人あたりの国内総生産が平均で約23%減少するという研究結果が、10月21日付けで科学誌「ネイチャー」に発表されました。   上の地図は…

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ますます難解になるIPCC報告書と、マスコミ報道の充実

  ネイチャー・クライメート・チェンジのハイライトに取り上げられた研究結果によると、これまで5度にわたって発表されている、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)評価報告書の政策決定者向け要約」がいつまで経っても読みにくいという評価を受けています。   I strongly agree with the study!   大学の授業では当然のように読んでいることを要求され、テストなどで内容…

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ハリケーン「パトリシア」を史上最強まで発達させたのはエルニーニョ?温暖化?

  10月23日の夜に、観測史上最強まで発達したハリケーン「パトリシア」が、メキシコ西部の太平洋東岸に上陸しました。上陸時にはわずかに勢力を落としましたが、その勢力は、2013年にフィリピンに大きな被害をもたらした台風30号「ハイエン」に匹敵する大きさでした。   中心部の最大風速は毎秒約90メートル(時速200マイル)、中心付近の気圧は879ヘクトパスカルと史上最強で、ハリケーンのカテゴリー…

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地球温暖化でワインがピンチ

  気候変動による気温上昇が原因で、コーヒーの生産量が減少する恐れがあるという記事を書きましたが、その中でも触れたように、気候変動の影響を受けるのは、コーヒーだけではありません。   ブルームバーグの記事によると、フランスボルドー地区で、ワインの原材料となるメルロー種のブドウが、夏の猛暑の打撃を受けたそうです。   以前より、ワインの原材料となるブドウは、地球温暖化の影響を最も受けやすい代表…

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9月の世界平均気温が観測史上最高を記録

  NOAA(米海洋大気局)の発表によると、世界の9月の平均気温は観測史上最高を記録しました。 Credit: NOAA   これで、今年に入ってから9ヶ月のうち観測史上2番目に暖かかった1月と、観測史上3番目に暖かかった4月を除くすべての月が観測史上最高の平均気温を記録したことになります。   また、年初からの9ヶ月間も、2010年と2014年の記録を0.12℃上回り観測史上最高となりま…

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南極海の温暖化と酸性化でナンキョクオキアミが危機に

  南極の生態系は、比較的数の少ない生物によって、食物連鎖のバランスが保たれています。このような種を「キーストーン種」と呼ぶのですが、南極では、ナンキョクオキアミがそれにあたり、クジラやアザラシ、ペンギンやアホウドリなどの重要な食料となっており、ナンキョクオキアミの減少は、南極の生態系の破壊に繋がります。   オーストラリア南極局の川口博士によると、近年の南極海の海洋温暖化と、海洋が取り込んで…

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エルニーニョが終わらない

  今年は、「エルニーニョ現象」という言葉を耳にする機会が多いと思いますが、これはエルニーニョ・南方振動(ENSO:エンソ)と呼ばれる、インドネシア付近と南太平洋の大気と赤道太平洋の海洋が連動して起こす一連のシーソーのような動きの片割れで、3年から7年に一度、太平洋の熱帯域に吹いている貿易風が弱まり、太平洋西部の温かい海水が東部へ広がることにより、ペルー沖の海水温が高くなるエルニーニョと呼ばれる…

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日本人の気候変動に関する意識

  人為的地球温暖化に対する気候科学者と米一般市民の認識度の違いについての記事で、90%以上という高いレベルで合意に達している気候科学者に対し、地球温暖化の原因が人間活動にあると答えた一般市民は約50%に過ぎませんでした。   では、日本人の気候変動に対する意識はどうなのでしょうか?   アメリカでは、ギャラップやピューリサーチなどの大手調査会社が定期的に世論調査を行っているほか、大学や各メ…

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気候科学者と一般市民の人為的温暖化に対する認識の差

  人為的温暖化の科学に関する合意形成についての記事で、気候科学者及び気候科学以外を専門とする科学者の間では、90%以上が人間活動による温暖化に同意しているという話をしました。   では、一般市民は人為的温暖化について、そして気候科学者間で人為的温暖化に関する高いレベルでの科学的合意形成がなされていることについて、どのような認識を持っているのでしょうか。   2013年のエール大学とジョ…

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【よくある間違い】人為的温暖化説はコンセンサスを得られていない

  人間活動による二酸化炭素の排出が温暖化の原因であるという説に対し、「温暖化の科学についてのコンセンサス(合意)はまだ得られていない」「人為的温暖化についての議論はまだ終わっていない」と主張する人がいまだに後を絶ちません。 【あわせて読んでほしい記事】◆ やっぱり人為的地球温暖化のコンセンサスは得られているという研究結果◆ 温暖化の深刻さを知りながら排出規制を妨害し続けたエクソンモービル社◆…

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気候変動でコーヒー生産が危機に

  気候変動による平均気温上昇の影響を受けて、多くの種が生息域を移動しています。北半球では、気温上昇に合わせて北上したり、より高地へ移動する種が見られます。   先日、AFPに中米・コスタリカのコーヒー農園が気候変動の影響を受けて悪戦苦闘しているという記事が掲載されましたが、コーヒー豆の収穫量の落ち込みは、以前から懸念されていました。   イタリアの焙煎メーカーのCEOによると、増え続けるコ…

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気候変動の倫理/公正的観点

  気候変動は、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスによって起こることから、科学的な問題として捉えられたり、対策を巡る政治的な側面も持ち合わせていますし、また、炭素税やキャップ&トレード制度の導入、再生可能エネルギーの導入による新市場における雇用促進などの経済的な面などが注目されています。   このすべてが「人間中心」の観点から気候変動問題を捉えています。しかも「先進国中心」で気候変動問題の対…

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気候変動による心理的影響~気候変動を否定する人の心理

  気候変動は、90%以上の気候科学者が「20世紀後半以降の気温上昇の大半は人間活動による温室効果ガスの排出が原因」という結論に達しているのですが、それでも「いや、温暖化していないったらしていない」と完全に否定する人や、「温暖化はしてるか知らんけど、人間のせいちゃう」と、自分たちの責任を認めようとしない、いわゆる「気候変動否定派/懐疑派」と呼ばれる特定のグループ(主に石油系企業やそれらの企業が出…

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北大西洋の熱塩循環がスローダウン?

  2015年8月の世界の気候レポートの記事で使用した世界の陸海表面の平均温度の地図上で、北大西洋のグリーンランド南側に、観測史上最高の平均気温を更新しようとしているのに、1ヶ所だけ過去最低気温を記録している場所がありました。   上の地図上の、黒で囲んだ濃い青の部分です。この地域(西経20度から同40度、北緯55度から同60度まで)の1月から8月の気温は、1880年以降で最も低くなってい…

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2015年8月の世界の気候レポート

  米の2015年9月の気候レポートの記事で、9月は若干涼しくなったものの、アメリカの西部と北西部が観測史上最も暖かい1月から9月を記録している反面で、東部や中西部、北東部は平均すると涼しい気候になっていると書きましたが、世界的に見るとどうなのでしょうか。  米本土48州と同じく、NOAA(米海洋大気局)による8月の世界の気候レポートで確認してみましょう(9月のレポートは未発表。発表され次第追記…

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アメリカの2015年9月の気候レポート

  米海洋大気局は、米本土48州の気温と降水量など、気候の状態のレポートを毎月公表しています。レポートは、1895年以降の気温(平均、最高、最低)と降水量を米本土全体、9つの地域、48州、郡の単位で、それぞれの記録が平年と比較してどうなのか、観測史上何番目になるのかを報告しています。   また、ウェブ上で年や月、州や地域、主な都市を指定して、過去から現在までの気温や降水量の変化をグラフにして見…

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