カリフォルニア州の水不足はエルニーニョだけでは解消しない

  エルニーニョ現象のピークは過ぎましたが、その影響がピークを迎えるのはまだこれからです。4年前から続く干ばつによって深刻な水不足に見舞われている米カリフォルニア州では、エルニーニョの勢力が最も強くなるのと合わせるように、降水量の増加が見られるようになってきました。   カリフォルニア州にとって夏の重要な水源となるシエラネバダ山脈の積雪量は、1月下旬としては平年の115%(約47.5センチ)に…

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女性が不公平に気候変動の深刻な影響を受けている~社会的構造が原因

                              Credit: waterdotorg   環境問題による悪影響は、すべての人に対して公平に降りかかることはありません。環境破壊が自然現象によって引き起こされたものでも、その最も深刻な影響を受けるのは社会的弱者であり、その弱者は所属する社会によって構造的に作り出された人たちです。また、人為的な環境破壊に至っては、政治的意思によって弱者…

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人為的気候変動なしで近年の記録的暑さはほぼ不可能

  21世紀に入ってから続いている記録的な気温の高さは、人為的地球温暖化の影響がなければほぼあり得ないという研究結果が「サイエンティフィック・レポート誌」に発表されました。   研究チームは、観測データとコンピュータによる気候システムのシミュレーションを総合して統計的分析を行いました。その結果、「自然変動」が原因で、最も平均気温の高い上位13年が2000年から2014年までの15年の間に集…

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気温が低い時間ほど温暖化が速く進む

  2回に渡って、気候変動による気温上昇の傾向としてよく見られる「気温の低い場所ほど温暖化が速く進む」「気温の低い季節ほど温暖化が速く進む」というトピックを取り上げてきましたが、最後は「気温の低い時間ほど温暖化が速く進む」傾向について書きたいと思います。   このトピックは以前にも触れたことがありますが、今回は違うグラフを用いて説明します。 1900年から2015年までの米本土48州(アラス…

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気温が低い季節ほど温暖化が速く進む

  前回は、北極を例に挙げ、基本的に「気温が低い場所ほど温暖化は速く進む」という話をしました。今回は、「気温が低い季節ほど温暖化が速い」という話です。これも前回と同じく、気温が上昇傾向にあるときは、基本的に大半の場所で当てはまるということで、すべてのケースで同じ現象が見られるわけではありません。 1950年から2014年までの季節ごと(緑の破線が春、赤線が夏、オレンジの線が秋、青線が冬)の世界…

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気温が低い場所ほど温暖化は速く進む

  地球が温暖化すると様々な場所でいろいろなサインが現れるという記事を以前に書いたことがあります。気温に関する現象としては、「地表と海上の気温が上昇」「対流圏の気温が上昇」というものがありました。   それとは別に、気温上昇の傾向として大半のケースで当てはまる傾向があります。気温の低い「場所」ほど温暖化が速く進む気温の低い「季節」ほど温暖化が速く進む気温の低い「時間」ほど温暖化が速く進む  す…

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テニスのグランドスラム大会が「暑い」

              Wimbledon/Credit: Albert Lee   現在、オーストラリアのメルボルンでテニスツアーの4大大会のひとつ、全豪オープンが開催されています。今年は一昨年ほどの酷暑ではありませんが、それでも35℃近い暑さの中でゲームが行われることもあり、ブレイク中に氷をまいたタオルを顔や額に当てて暑さ対策をするプレーヤーたちの姿を見かけます。   近年は、ゲーム…

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【よくある間違い】寒波や大雪は温暖化していない証拠

  気候変動による温暖化が進み、2年連続で地球の平均気温が観測史上最高記録を更新しても、冬に寒波に襲われて大雪が降ると、「地球温暖化は嘘」「地球は寒冷化している」と言い始める人が後を絶ちません。   現在(2016年1月23日)、米東部から北東部にかけて、冬のストーム「ジョナス」による暴風雪に見舞われ、ワシントンD.C.では40センチ、ニューヨークでは60センチを超える積雪によって、空と陸の交…

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気候変動は中間所得層の楽しみを奪い不安をもたらす

  スイスのチューリッヒに本拠を置く金融持株会社「ユービーエスグループ AG」の報告書によると、世界15ヶ国の主要215都市に暮らす中間所得層の支出の優先度を調査したところ、米ロサンゼルスや東京、上海などの気候変動による深刻な影響を受けやすい都市では、贅沢品や娯楽、耐久消費財に使うお金よりも、居住設備への支出の方が0.6%から0.8%多かったそうです。 2015年1月から6月までの、世界で自然…

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エルニーニョ現象がピークを過ぎる

  1997年から98年にかけて猛威を振るった史上最強のエルニーニョ現象と並ぶ規模まで強くなった、2015年に始まったエルニーニョが、ようやくピークを過ぎました。今後は、ニュートラルに戻ると予測されている初夏に向けてゆっくりと勢力を弱めていくことになると思いますが、その影響はまだピークを迎えておらず、今後も世界各地で豪雨や洪水、干ばつなどの被害が出ることが懸念されます。 2015年10月28か…

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2015年の世界は観測史上最も暑かった~2年連続で観測史上最高を更新

Credit: NOAA  米海洋大気局(NOAA)、米航空宇宙局(NASA)、英気象庁によると、2015年はそれぞれのデータで観測史上最高の平均気温を記録しました。11月までの記録を見れば予測できる範囲(11月の時点で2015年が最も暑い年になる確率は99.999%)なので驚きはありませんが、これで2014年に続き2年連続で観測史上最高記録を更新したことになり、本格的に温暖化が再び加速を始めた…

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温暖化の熱の90%が海へ うち35%以上が700メートルよりも深い海域に蓄積

  直近20年間に海洋が吸収する地球温暖化による余剰熱の量が急増し、その35%を水深700メートルよりも深い海域が吸収しているという研究結果を、米ローレンス・リバモア国立研究所の研究チームが科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に発表しました。  この研究は、気候変動懐疑派が話題にする「温暖化ハイエタス」と呼ばれる、エルニーニョで異常に暑かった1998年以降に緩やかになった気温上昇の原因が…

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オバマ政権が公有地での新規石炭採掘を一時停止

  任期の最終年を迎えたオバマ大統領は、先日行われた最後の一般教書演説でも気候変動問題でレガシーを残す意欲を見せましたが、その3日後に公有地をリースして行う新規の石炭採掘を一時停止すると発表しました。ただし、現在既に開始している石炭採掘は続けることができるため、オバマ政権は国内のエネルギー供給に問題が生じることはないだろうと見ています。  2014年の時点で、アメリカの公有地ではリースプログラム…

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気候変動対策に反対する人たちが答えるべき倫理/公正に関する質問: 他国との兼ね合い編

  気候変動対策実施に反対する理由としてよく見聞きする「経済的損失」「科学的不確実性」そして「他国が同様の気候変動対策を講じない」について、倫理的/公正的観点から問いを投げかける記事を3回に分けて書いているのですが、今回はその3回目、「他国が同様の気候変動対策を講じない」ことを理由に気候変動対策に反対する人や団体が問われるべき倫理/公正に関する事項を挙げていきます。【これまでの記事】◆ 気候変動…

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12月の世界平均気温が観測史上最高を記録 2015年が最も暑い年になることが確実に(気象庁)

  気象庁による速報値で、2015年12月の世界の平均気温が、同月としては観測史上最高を記録したことがわかりました。まだ公式ではありませんが、これで2015年が前年を上回って観測史上最も暑い年になることが確実になりました。 細線(黒):各年の平均気温の基準値からの偏差、太線(青):偏差の5年移動平均、直線(赤):長期的な変化傾向。基準値は1981〜2010年の30年平均値。Credit: 気象…

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気候変動対策に反対する人たちが答えるべき倫理/公正に関する質問: 科学的不確実性編

  経済的損失、科学的不確実性、そして他国が同様の気候変動対策を講じないことを理由に、温室効果ガス削減などの気候変動対策の実施に反対する人たちが答えるべき倫理的・公正的質問について、前回の記事では経済的損失や特定産業の損失、失業者の増加などの経済への影響を理由に、政府による気候変動対策に反対する人/団体が答えるべき倫理/公正に基づく問いを挙げました。  今回は、科学的不確実性を根拠に気候変動対策…

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気候変動対策に反対する人たちが答えるべき倫理/公正に関する問い: 経済コスト編

  気候変動が科学や政治、経済だけではなく、倫理や公正の問題として捉えられなければならないということは、これまでに触れたことがありますが、気候変動対策が失業率の上昇や経済の衰退に繋がるという主張や、気候変動の科学的な不確実性を根拠に気候変動対策に反対したり(不確実性を通り越してそもそも温暖化していないという意味不明な主張もありますが)、政治的な思惑を絡めて懐疑論を展開する個人や企業・団体が後を絶…

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人間活動由来の二酸化炭素が原因で次の氷河期がキャンセル

  人間活動に由来する二酸化炭素が原因で次の氷河期がキャンセルされるという研究結果が、科学誌「ネイチャー」に発表されました。また、同研究では、完新世の中頃に氷河期に入るのを逃れたことについても触れています。  研究チームは、氷期の始まりと関連するミランコビッチサイクルと二酸化炭素濃度のデータを用い、コンピュータモデルで過去の地球規模の氷期を分析し、未来の氷期をシミュレーションしたところ、過去と未…

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フラッキング(水圧破砕法)って何?フラッキングの何が問題?

  ここ数年、「シェールブーム」という言葉をよく耳にするようになりました。アメリカでは、フラッキング(正確にはハイドロ・フラクチャリング/水圧破砕法)と呼ばれる採掘法を用いて、従来の方法では採掘することができなかった層にあるシェールガス/シェールオイルの採取が可能になり、国内の原油生産量が大きく伸び、長年の課題であった原油を輸入に依存する体質が改善され、ついには海外への原油輸出を開始する法案が可…

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「人為的地質年代(人新世)」の始点は20世紀中頃と地質学者ら

                                Credit: Waters et al. 2016   21世紀に入ってから、産業革命以降の人間による地球環境への影響度が著しく増大した時代を「Anthropocene(アントロポシン)/人新世」と呼ぶようになりましたが、公式な地質年代として認められているわけではなく、いつから始まったのかという定義もコンセンサスを得ていません。…

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