気候変動の話題でよく誤解されているのが、「天気」と「気候」の違いです。
気象庁気象研究所の「気象の事典(平凡社)」の引用によると、「天気」は「ある時刻または時間帯の気象の状態。時間帯としては、数分からせいぜい2~3日程度」、「気候」は「通常は数十年間という大気の総合した状態の移り変わり」とされています。
デジタル大辞泉によると、「天気」は「ある場所の、ある時刻の気象状態。気温・湿度・風・雲量などを総合した状態。」、「気候」は「ある土地で、1年を周期として繰り返される大気の総合状態。現在は気温・降水量・風などの30年間の平均値を気候値とする。」となっています。
「今日ごっつう暑いな。温暖化やな。」
「この時期にこんな寒うて雪ごっつう積もってるのにどこが温暖化やねん。」
こういう意見を見聞きしますが、その日が暑いとか寒いとか、雪がどれだけ積もったかなどは全部「天気」であって、「気候」ではありません。「天気」は、ある時点での大気の状態(気温・湿度・降水量・風速など)を表します。一方、「気候」はそれらの20~30年以上に渡る長期的な傾向(30年以上が好ましい)のことをいいます。
「今日傘を持っていくかどうか」を判断するために必要なのが「天気」で、スキー場の経営を計画する際に将来の積雪量がどれくらいかを予測するために必要なのが「気候」と考えればわかりやすいのではないでしょうか。
「気候変動」は、30年以上の長期に渡る、気温や降水量、海水面の高さ、海氷や氷床の面積などの人為的および自然な変化を指します。よく「気候変動」と「地球温暖化(以下「温暖化」)」が同じ意味で用いられますが、「温暖化」は気候のひとつの要素である大気と海洋の地球全体の平均(世界の平均温度)が、長期に渡って上昇傾向にあることを表しています。
従って、ある地域のある年の夏が平年に比べて猛暑だったということだけで「地球温暖化」と言い切ることはできませんし、逆にある地域のある年の冬の寒さが極端に厳しく、平年よりも積雪量が多かったからと「地球寒冷化」とも言えません。
暑い日(季節/年/年代)もあれば、寒い日(季節/年/年代)もあって、それは場所によって異なるので、特定の地域の短期間のデータだけで地球が温暖化しているかどうかを判断することはできません。例えば、ここ数年、アメリカでは西部(西海岸から北西部・アラスカ)の冬の気温が高く、乾燥しているのですが、北東部の冬は極端に寒く降雪量が多くなっています。西部の人たちは「温暖化している」と主張する人が多く、北東部では「寒冷化している」と多くの人が言います。
でも、「地球が温暖化(寒冷化)しているかどうか」は、地球全体の平均気温の長期データの傾向を調べて判断することになります。
以下の動画のトレンドとバリエーションの違いの説明が、そのまま気候(トレンド)と気温(バリエーション)に当てはめることができて、とてもわかりやすいです。
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