気候変動は、90%以上の気候科学者が「20世紀後半以降の気温上昇の大半は人間活動による温室効果ガスの排出が原因」という結論に達しているのですが、それでも「いや、温暖化していないったらしていない」と完全に否定する人や、「温暖化はしてるか知らんけど、人間のせいちゃう」と、自分たちの責任を認めようとしない、いわゆる「気候変動否定派/懐疑派」と呼ばれる特定のグループ(主に石油系企業やそれらの企業が出資しているシンクタンクが中心)がいます。米FOXニュースなどの保守系メディアが積極的に気候変動の科学を否定するため、その主な視聴者である共和党支持者を中心に根強い否定論や懐疑論が絶えることがありません。
では、気候科学のメインストリームではこれだけの一致を見ている気候変動による温暖化の原因を、なぜここまで否定的/懐疑的に捉える人が多いのでしょうか。また、そのような人たちにどのような心理的影響が働いているのでしょうか。
2012年に発行された、精神分析医が携わった全米野生生物連盟のレポートによると、今後、多くのアメリカ人が、気候変動を原因とする気温上昇、異常気象、資源の減少によって、抑鬱や不安障害、心的外傷後ストレス障害、薬物乱用、自殺、暴力の発生に悩まされることになるだろうと予測しています。
筆者のひとりであるVan Susteren氏は、「気候変動を否定する人は、真実を聞くストレスに耐えられない。何かについての真実を聞く準備ができていない人たちは、単純にその真実を否定するのです。」と話しています。
逆に、気候変動の科学を認め、気候変動によってもたらされるであろう将来的な被害を防ぐために行動している人たちは、また別のストレスにさらされているといいます。その予測される被害の大きさと、進まない気候変動対策、気候変動否定派との関わりからくるストレスなどから、まだ起こっていない現象・事象を極度に憂うことによって、「Pre-traumatic stress disorder(心的外傷前ストレス障害)」を患ってしまうとVan Susteren氏は言います。
気候変動問題の解決に取り組む人たちは、このようなストレス障害と付き合うために、自分にコントロールできる範囲のことだけに集中し、自分の生活を充実させることが必要だと筆者は言っています。そして、気候変動問題を解決していくことが自分にとって最大の薬になる、と。
こうやって見ると、気候変動は、その存在や原因を否定しても認めても心理的ストレスを感じずにはいられない問題であると言うことができるでしょう。
【参照】
The Psychological Effects of Global Warming|National Wildlife Federation
This Is Your Brain On Climate Change|ThinkProgress
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