気候変動でコーヒー生産が危機に

  気候変動による平均気温上昇の影響を受けて、多くの種が生息域を移動しています。北半球では、気温上昇に合わせて北上したり、より高地へ移動する種が見られます。

  先日、AFPに中米・コスタリカのコーヒー農園が気候変動の影響を受けて悪戦苦闘しているという記事が掲載されましたが、コーヒー豆の収穫量の落ち込みは、以前から懸念されていました。

  イタリアの焙煎メーカーのCEOによると、増え続けるコーヒーの需要を満たすためには、今後10年間で4千万から5千万袋のコーヒーを増産する必要があり、これは現在のブラジルの生産量を上回るのだそうです。また、気候変動に加えて、コーヒー生豆が安値のため、農家が増産をためらっており、2015年から2016年にかけて350万袋の不足が見込まれています。

  また、クリスチャン・バン氏らによる研究結果(Bunn et al. 2014)では、全コーヒーの70%を占めるアラビカ種の栽培に適した土地が今後2050年までに現在の半分まで減少する恐れがあるそうです。

  別の研究(Megrach&Ghazoul 2015)では、アラビカ種の需要を満たすためには、220万ヘクタールの熱帯雨林を開拓する必要があり、その影響で35%の脊椎動物種が失われると予測しています。

  アラビカ種は気温上昇に弱いと言われており、すでに涼しい気候を求めて高地へと移動を始めていますが、いつまでも移動を続けることができるわけではありません。私たちの世代がコーヒーを失うことはないとは思いますが、コーヒーが高価な飲み物になる可能性は否定できませんし、もしかすると数世紀後には、コーヒーという飲み物が歴史になっているかもしれません。

  そして、そのような可能性がある飲み物や食べ物は、コーヒーだけではありません。今後取り上げていく予定ですが、チョコレートやピーナッツ、ワイン、ビールなども気候変動による絶滅、または大規模な減少が懸念されています。

【参照】
Bunn, C., Laderach, P., Ovalle Rivera, O., & Kirschke, D. (2014). A bitter cup: climate change profile of global production of Arabica and Robusta coffee. Climatic Change, 129(1-2), 89-101. doi:10.1007/s10584-014-1306-x
Magrach, A., & Ghazoul, J. (2015). Climate and Pest-Driven Geographic Shifts in Global Coffee Production: Implications for Forest Cover, Biodiversity and Carbon Storage. PLOS ONE, 10(7), e0133071. doi:10.1371/journal.pone.0133071

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