人為的温暖化の科学に関する合意形成についての記事で、気候科学者及び気候科学以外を専門とする科学者の間では、90%以上が人間活動による温暖化に同意しているという話をしました。
では、一般市民は人為的温暖化について、そして気候科学者間で人為的温暖化に関する高いレベルでの科学的合意形成がなされていることについて、どのような認識を持っているのでしょうか。
2013年のエール大学とジョージメーソン大学の世論調査(Leiserowitz et al. 2013)によると、気候科学者間の97%の人為的温暖化に合意形成に対し、「気候変動が実際に起こっていて、人間活動がその原因である」ことに賛成した米一般市民は41%でした。実に、両者には56%の差があります。
その後のフォローアップ調査(Leiserowitz et al. 2015)によると、上のグラフのように、米市民の52%が人為的地球温暖化に同意し、32%が地球温暖化は自然現象であると答えています。
上のグラフは、「何パーセントの気候科学者が、人為的地球温暖化が起こっていることに同意していると思いますか?」という質問に対する答えの割合を示したものです。実際には90%以上の気候科学者が同意しているのですが、一般市民でそれを知っているのは9%しかいませんでした。半数以上の気候科学者が合意に達していると考えている人(51%以上を合計)は46%でした。
米の世論調査大手ピューリサーチのアンケートによると、50%が人間が地球温暖化の原因であると答えています。また、人種ではヒスパニック系が高い数値を、年齢では若いほど高い数値を示しています。
また、ミシガン大学の調査では、70%の人が、「過去40年間、地球の平均気温が上昇している確かな証拠がある」に賛成しています(原因が人間活動であるかどうかの質問ではありません)。また、カリフォルニア州に代表されるように、近年全米各地で頻繁に見られる干ばつがその証拠として最も挙げられています。
こうして見ていくと、ここ数年の異常気象(干ばつや熱波、大雨による洪水、ハリケーンなどの極端な気象)の多さが原因なのかはハッキリしませんが、米市民の気候変動に対する認識は高くなってきているようです。
しかし、それでもまだ一般市民の約50%しか人為的地球温暖化に同意しておらず、気候科学者との開きは依然として大きいままです。
ただ、一般市民の人為的温暖化への同意が低い理由は、気候科学者への信頼度の低さの表れではないことが、上のグラフからわかります。アンケートでは、71%の人が気候科学者を「強く信頼できる」と「幾分信頼できる」と答えており、この数値は家族や友だち、テレビの天気レポーター、オバマ大統領やローマ法王を上回っています。
現状では、人為的地球温暖化について、「気候科学者のことは信用できるが、気候科学者間でのコンセンサスがまだ得られていない」と捉えている米一般市民が多いようです。この一般市民と気候科学者間の大きな溝を埋める努力が必要でしょう。
【参照】
Leiserowitz, A., Maibach, E., Roser-Renouf, C., Feinberg, G., & Howe, P. (2013). Climate change in the American mind: Americans’ global warming beliefs and attitudes in April, 2013. Yale University and George Mason University. New Haven, CT: YaleProject on Climate Change Communication.
Leiserowitz, A., Maibach, E., Roser-Renouf, C., Feinberg, G., & Rosenthal, S. (2015). Climate change in the American mind: March, 2015. Yale University and George Mason University. New Haven, CT: Yale Project on Climate Change Communication.
Acceptance of Global Warming Among Americans Reaches Highest Level Since 2008|University of Michigan
この記事へのコメント