南極海の温暖化と酸性化でナンキョクオキアミが危機に

  南極の生態系は、比較的数の少ない生物によって、食物連鎖のバランスが保たれています。このような種を「キーストーン種」と呼ぶのですが、南極では、ナンキョクオキアミがそれにあたり、クジラやアザラシ、ペンギンやアホウドリなどの重要な食料となっており、ナンキョクオキアミの減少は、南極の生態系の破壊に繋がります。

  オーストラリア南極局の川口博士によると、近年の南極海の海洋温暖化と、海洋が取り込んでいる二酸化炭素の増加による海洋酸性化が原因で、ナンキョクオキアミの卵がふ化しにくくなっており、今後も二酸化炭素排出量が削減されないようだと、2100年までにナンキョクオキアミの個体数が20%から70%減少することになると話しています。また、2300年には、南極海はナンキョクオキアミが生存できる環境ではなくなるそうです。
  川口博士は以前にも南極の海洋酸性化がナンキョクオキアミのふ化を妨げることになるという研究結果を発表しており、今回のニュースはそれを裏付ける形になっています。


  また、ノルウェーのグループの研究によると、2014年にはノルウェー、韓国、中国によって、年間約30万トンのナンキョクオキアミが商業的に収穫されており、個体数の減少に更なる人為的な影響が加えられていることも懸念材料になっています。

  漁にせよ、二酸化炭素の排出による海洋温暖化と酸性化にせよ、私たち人間のフットプリントは、目の届かない場所にまで及んでいるのです。

【参照】
海洋学:海洋酸性化でオキアミが死滅する| Nature Climate Change|Nature Publishing Group

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