気候変動は、経済の問題でもあります。平均気温が上昇を続けると、熱波や寒波、干ばつや豪雨などの極端な気象事象が起こりやすくなり、農産物の生産量や仕事の効率に影響を与え、経済的損失に繋がります。
このまま平均気温の上昇が続くと、2100年までに世界の一人あたりの国内総生産が平均で約23%減少するという研究結果が、10月21日付けで科学誌「ネイチャー」に発表されました。
上の地図は、1980年から2010年までの平均気温とIPCCの最悪のシナリオ(RCP8.5/気候変動対策をしないシナリオ)を比較して、2100年までにどれくらい各地域(世界を9地域に区分)の一人あたりのGDPが増減するかを表したものです。
世界の平均は約23%の収入減となっていますが、アメリカは平均よりも悪く、地球温暖化によって2100年までに一人あたりの国内総生産が約36%減少するそうです。研究に日本についての言及はありませんが、地図の色と論文内のグラフを見る限りでは、アメリカと同程度の収入減になると思われます。
懸念されるのは、地図を見てわかる通り、アフリカや中東、アジアの発展途上国ほど気温上昇による悪影響のために収入が減少すると予想されていることです。研究は、40%の途上国で、一人あたりの国内総生産が約75%減少すると予想しています。
また、同研究では、平均気温13℃を超えると一人あたりの国内総生産が減少し始めるとしていますが、この気温はすでに20世紀の世界平均気温の13.9℃を超えています。つまり、この研究によると、地球はすでに最適生産環境ではなくなってきており、これから先は気温上昇に伴って一人あたりの生産量が減少に向かうことになります。アメリカでは、ニューヨークやサンフランシスコなどの平均気温が約13℃、日本では福島市や仙台市などの2014年の平均気温が13℃に近い値になっています。
でも、中には地球温暖化が利益に繋がる国もあります。カナダやロシア、北欧などの、現在の平均気温が13℃よりも低い国々は、気温上昇と共に収入が増加することになりそうです。
同研究内容については、経済学者から批判の声が相次いでいますが、このような研究が今後の活発な議論に繋がっていけばいいと思います。
気候変動は、その原因となっている温室効果ガスの排出量と比例することなく、発展途上国に不公平な悪影響を与えます。そして、多くの途上国は、その悪影響を克服するための経済力や技術力、生産力を持ち合わせていません。
温室効果ガス排出量削減等の気候変動対策への早急な取り組みが求められるのはもちろんのことですが、先進国から途上国への現在から未来にかけての経済支援(経済的補償と言い換えてもいいと思います)や技術協力などについても、国際的なルール作りが必要です。
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【参照】
Burke, M., Hsiang, S. & Miguel, E. Global non-linear effect of temperature on economic production. Nat. (2015). doi:10.1038/nature15725
2015 Likely To Be The Hottest Year Ever Recorded|Huffington Post
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