温暖化が原因でペルシャ湾岸の猛暑が人間の許容限度を超える可能性

  今後、気候変動対策を講じることなく、これまでと同じように温室効果ガスを排出し続けると、今世紀末までにはペルシャ湾岸地域の極端な気温と湿度が人間の許容範囲を超え、人が住むのに適さない環境になる可能性が高いという研究結果(Pal & Eltahir 2015)が、「ネイチャー・クライメート・チェンジ」のオンライン版に掲載されました。

  人間の体は、汗をかき、それが蒸発する際の冷却作用によって熱を発散させて暑さに適応しますが、湿球温度と呼ばれる気温と湿度の複合的な指標が35℃を下回っている必要があり、それを超えると自力で熱を発散させることができなくなるため、外部からの冷却源がなければ熱中症を引き起こすなど、屋外での生存が困難になります。論文の作者によると、湿球温度が35℃を超えると、健康な人間でも屋外で2~3時間しか暑さに耐えることができないそうです。

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  上のグラフは、1976年から2005年までの湿球温度の変遷(青)と、今後気候変動対策を講じて温室効果ガスの排出量を削減した場合(緑)と、温室効果ガス排出量を削減しない場合(赤)に湿球温度がどうなるかを示したものです。
  現在と同じように温室効果ガスの排出を続けると、ペルシャ湾岸のダーラン(サウジアラビア)、バンダルアバス(イラン)、ドーハ(カタール)、ドバイ、アブダビ(共にアラブ首長国連邦)などの都市で、2071年から2100年の間に、この湿球温度を上回る可能性が高いそうです。

  また、研究ではサウジアラビアのメッカに訪れるイスラム教徒の巡礼者が深刻な影響を受ける年が数回あると指摘しています。巡礼は屋外で行われるため、特に高齢者の健康に悪影響を与える可能性が高いそうです。

  今後も気候変動が人間の健康に与える影響についての研究が活発に行われると思いますが、今世紀中に人間が生き残るのが困難な状況になる地域が出てくる可能性が高いという研究結果にショックを受けている研究者もいるようです。

  しかし、気候変動対策を施せば、湿球温度を超える可能性が限りなく低くなることを同研究は示している(グラフの緑の折れ線)ので、国際社会で法的拘束力のあるルール作りを早急に進めればいいのです。

【参照】
Pal, J. & Eltahir, E. Future temperature in southwest Asia projected to exceed a threshold for human adaptability. Nat. Clim. Change (2015). doi:10.1038/nclimate2833

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