温暖化が東南アジア諸国の生産性を著しく低下させ、労働者の健康問題を引き起こす

  先日、地球温暖化が原因で2100年までに世界の一人あたりの国内総生産が平均で約23%減少するという研究結果についての記事を書きましたが、近頃発表された英リスクコンサルタント会社のベリスク・メープルクロフト社の新しいレポートによると、温暖化が原因で職場の熱ストレスが高くなり、熱中症などによって東南アジア諸国の主要都市で生産性が2045年までに平均16%低下するそうです。

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2045年の熱ストレスによる東南アジア諸国の生産性の低下予想
Credit: Mashable

  レポートによると、東南アジア諸国の中でもシンガポール、マレーシア、インドネシアが特に熱ストレスによる生産性の低下が著しく、熱ストレスによるリスクが高い50都市のうち、マレーシアが20都市、インドネシアが13都市を占めています。

  東南アジア諸国は、タイを筆頭にコンピュータチップなどハイテク産業の製造工場が多く、暑さによる生産性の低下でコンピュータ市場への影響が懸念されるなど、急速な経済成長を期待されている地域が、職場環境の悪化によって逆風を受けることになるかもしれません。

  また、これは経済だけの問題ではなく、製造工場等の職場で冷房設備が温暖化に追いつかない、または冷房を完備してもなお労働者が暑さによるリスクを負わされる健康問題でもあり、同時に、ハイテク機器の大半は多国籍企業によって主に先進諸国で売買されるため、製造・生産に関わった国の低賃金労働者がリスクを負い、先進国の多国籍企業が利益を得る、典型的な環境正義問題、この場合は気候変動が関係しているので気候正義問題でもあります。

  これらの問題を解決するためには、暑さを緩和するための気候変動対策だけでなく、労働環境の悪化による労働者の健康被害を防ぐために、開発途上国にある多国籍企業傘下の下請工場などのサプライチェーン(製品の原材料調達から製造、加工、流通に至る供給プロセス)を監視するための国際的ルール作りが必要です。


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