なぜ気温上昇を「摂氏2度」までに抑えなければいけないのか?

  地球温暖化問題では、必ずと言っていいほど「2100年までの気温上昇を、産業革命以前と比較して摂氏2度未満に抑えなければいけない」という目標を見聞きします。摂氏2度を超えると、大変危険な気候になってしまうと言われていますが、その根拠はなんなのでしょうか?

1. 「摂氏2度」はどこから始まったのか?
  この摂氏2度という数字は、1990年代に当時の研究結果などを元に、政治的に決められた国際的な目標でしかありません。でも、だからといって「ほな3度でも4度でもええやんか」という話ではありません。
  この2度という数字を最初に唱えたのは、イェール大学の経済学者、ウィリアム・ノードハウスで、1977年に、論文("Economic Growth and Climate: The Carbon Dioxide Problem")の中で、「過去10万年で経験したことのない気温(摂氏2度以上の上昇)になると、コントロールがきかなくなる」と述べています。

2. 「摂氏2度」が国際基準になった経緯は?
  気候科学者たちによる「産業革命前よりも気温が2度上昇すると、深刻な現象が起こる可能性が高い」という多くの研究結果を元にした警告に、政治が応えました。1990年代にドイツが「摂氏2度未満」を政治目標に掲げ、その後、EC(欧州委員会)、G8(主要8か国首脳会議)全米科学アカデミーコペンハーゲン合意などが続きました。
  このコペンハーゲン合意には、アメリカや日本も署名をしており、2015年末にパリで開催されるCOP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)での、法的拘束力のある国際的なルールの決定が期待されています。

3. 産業革命前よりも「摂氏2度」気温が高くなるとどうなるのか?
  米国学術研究会議IPCC世界銀行などによると、以下のようなことが起こるそうです。

  • アメリカの山火事や野火の規模が、現在の4倍から8倍に上昇する。
  • ハリケーンの強さが2%から8%増しになる。
  • 様々な生物(特に両生類)が絶滅の危機に瀕する。IPCCの予測では、20%から30%の動植物の絶滅の危機が強まる。
  • 北極圏の氷の融解が引き続き起こり、1年あたり30%縮小を続ける。
  • アメリカ、インド、アフリカの穀物生産高が10%から30%減少する。
  • 淡水の供給力が20%減少する。
  • 海面が26センチから82センチ上昇する。

4. 現段階で産業革命前から何度気温が上昇しているのか?
  産業革命以降、地球の気温は既に約0.85℃上昇しています。また、現時点までに排出されてきた二酸化炭素の量で、1.5℃まで(あと0.65℃)は確実に上昇すると言われています。そして、135年間で0.85℃の気温上昇が、近年の極端な気象現象を引き起こしていると考えると、私たちはすでに「危機的な気候変動」を経験していると言えるのではないでしょうか。

5. 気温上昇を摂氏2度未満に抑えることは可能なのか?
  結論から言えば、「可能」です。ただし、相当困難です。「可能」とはいっても、「不可能に近い可能」です。わずかな希望が残されている、といった感じです。言い換えれば、ほぼ絶望的です。今のままでは。

  産業革命前から2100年までの気温上昇を摂氏2度未満に抑えるには、今後85年間、「凄まじい勢い」で温室効果ガスの排出量を削減しなければなりません。
  この「凄まじい勢い」がどれくらい凄まじいかというと、2050年までの35年間で、温室効果ガスの排出量を約80%から90%削減させなければいけません。
  この条件を満たすために「凄まじい勢い」で温室効果ガスの排出量を削減するには、「凄まじい勢いの社会(生活)の変化と技術の革新」が要求され、そのためには国際社会、各国政府、地方自治体、ローカルコミュニティ、企業から個人に至るまで、すべてのレベルでの「凄まじい努力」が必要です。
  摂氏2度未満に抑えることの難しさや、目標を達成するために必要なこと、その方法については別の記事で述べることにします。

6. このまま何もしないとどうなるのか?
  このまま排出量削減のための取り組みを怠り、これまで通り温室効果ガスの排出を続けると、最悪のケースでは2036年までに産業革命前と比較して気温が「摂氏2度」上昇する可能性があります。  また、2100年までに3℃から5℃上昇するという別の研究結果もあります。
  IPCCは、気温が5度上昇した場合、「地球全体で大規模な絶滅が起こる」「海岸線が世界規模で変化する」と予測しています。

  気候変動は、予測よりも進行が速く、また、その影響も予測した以上に深刻です。緩やかな変化が起こっている間(ハリケーンや干ばつ、洪水などによる大きな被害が世界中で起こっているので、当事者になるまでは気付くことができませんが、たとえ気候の変化が緩やかでも、その影響はすでに深刻)はいいですが、破壊的な気象現象が頻繁に起こり始めると、対応できなくなるかもしれません。

  産業革命前からの気温上昇が摂氏2度未満ならばよいという話ではありません。もちろん、5度上昇するよりも3度上昇する方がいいに決まっていますが、平均気温が上昇することは、それがたとえわずかであっても、深刻な被害をもたらす気象現象の増加の原因になります。

  行動を起こさない理由はないと思います。


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