2008年にカナダのトランスカナダ社が米国務省に建設認可申請を提出し、審査が7年に及んでいた、カナダとアメリカ国境をまたぎ、カナダのアルバータ州からテキサス州メキシコ湾岸を結ぶキーストーンXLパイプラインの建設プロジェクトが、2015年11月6日付でオバマ政権によって却下されました。

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  建設費8億ドル(約985億円)のキーストーンXLパイプラインは総距離約1900kmに及び、カナダのアルバータ州からテキサス州のメキシコ湾岸まで1日あたり83万バレルの原油を輸送するはずでした。カナダとアメリカの国境をまたぐことから、モンタナやサウスダコタ、ネブラスカなどの通過する州だけではなく、米国務省の認可が必要だったため、審査に7年もの時間を要しました。アメリカ側のパイプラインは、すべて建設済みで、国境をまたぐ部分だけが建設されないままになっていました。

  11月6日の会見でオバマ大統領は、パイプラインの建設がガソリン価格の低下やエネルギー安全保障を高める手助けにはならず、アメリカ経済にとって有効ではないことを建設却下の理由に挙げました。また、11月末フランスのパリで開催される気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)に向けて、ここでアメリカが厳しい判断を示せないようでは、今後のリーダーシップを損ねることになるという懸念もあったようです。

  オバマ大統領は、「我々が、手遅れになる前に気候変動による最悪の状況を避けたければ、行動を起こすのは今だ。『あとで』でも『いつか』でもなく、ここで、今すぐだ。」と述べました。
  会見に同席したジョン・ケリー国務長官は、建設却下の決定について、「我々自身が厳しい決断を下せなければ、他の国々に難しい選択を迫ることなどできない」と話しました。

  また、オバマ大統領は、米共和党や石油産業の「パイプライン建設で仕事が増え、経済効果をもたらす」という主張を退けました(米国務省は、一時的に4万2千人の雇用に繋がるが、建設完了後も仕事を続けられるのは35人だけと見積もっています)が、リベラルや環境保護団体、米環境保護庁(EPA)などの「パイプラインを認可すると、二酸化炭素排出量が著しく増加する」という主張も「それほど増加しない」と否定しています。これはその通りで、審査中も、アメリカ側、カナダ側共に別ルートのパイプラインや、鉄道など別の手段を用いて原油輸送は続けられており、今回の申請却下後も、これまで通りに鉄道輸送を続けるか、カナダの東海岸か西海岸までのパイプラインと精油所を建設して、そこから海外へ輸出することになるため、温室効果ガスの排出量の大幅な削減には繋がらないといわれています。

  つまり、あくまでも今回却下されたのはアメリカとカナダの国境をまたぐ部分の建設だけで、国境を越えて原油を輸送する手段がなくなったわけではありません。また、テキサス州のメキシコ湾岸まで輸送され、そこで精油されて海外へ輸出する原油の量は削減できるかもしれませんが、カナダのアルバータ州でのタールサンド採掘が中止に追い込まれるわけではありません。カナダの新政権は、今後もタールサンドの採掘拡大を計画しており、オバマ大統領による申請却下の会見を受けて、カナダのジャスティン・トルドー新首相は、「アメリカの決定には失望しましたが、アメリカが決定を下す権利は尊重します。」という声明を発表しています。

  オバマ政権の決断を受けて、アメリカのリベラルや環境保護団体などは、パイプライン建設却下の決定を歓迎し、オバマ大統領を称える声明が多く出されています。
  逆に、米共和党の大統領指名候補者や石油産業、保守系シンクタンクなどからは、「中間所得層の仕事が減る」「経済が失速する」などの、オバマ大統領の決定を批判するコメントが相次いでいます。

  キーストーンXLパイプライン建設問題は、オバマ大統領にとって、また、米国内外で気候変動対策への取り組みをアピールする人たちにとって、気候変動問題のシンボル的な働きをしてきたので、COP21に向けて追い風になりそうです。


【参照】

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