気温が産業革命前から摂氏2度上昇すれば、海面はどれくらい上昇するのかという記事で、最悪の場合、2℃の気温上昇が6メートルの海面上昇に繋がるという研究結果について触れました。
では、もしも今後数百年から数千年かけて海面が6メートル上昇した場合、海岸付近の都市はいったいどうなるのでしょうか?
下の米主要都市の地図は、Climate Central のマッピングツールを用いて、左は温室効果ガス排出量を削減しない場合、右は排出量を厳しく規制し削減した場合を比較して表示しています。地図の青い部分は、海面上昇によって沈んでしまう場所です。
2℃上昇の場合には4.7メートル、4℃上昇では8.9メートルの海面上昇が起こるという研究結果に基づいて作成されています。
ルイジアナ州ニューオーリンズ
フロリダ州マイアミ
ニューヨーク州ニューヨーク
ワシントン州シアトル
マイアミは、今後の温室効果ガス削減策次第で海面上昇による被害の規模が大きく変わってきそうです。ニューヨークは、人口が多いため、たとえ影響を受ける地域が小さくても、被害の規模は大きくなるでしょう。ハリケーン・サンディがニューヨークを直撃したときには、海抜の低い地域に集中していた低所得者層が最も大きな影響を受けたことからも、気候変動に対する適応力が高くないのは明らかです(現段階でサンディやカトリーナクラスのハリケーンが直撃しても被害が出ない大都市があるとは思えませんが)。シアトルも、ビジネスと人口が集中している地域が海面上昇の影響を大きく受けそうです。
ニューオーリンズに至っては、地図を見る限りでは、今後どのような気候変動対策を施してもその被害の規模は相当大きくなると思われます。ハリケーン「カトリーナ」の上陸から10年経っても、まだ復興が終わっておらず、比較的復興が進んでいる場所でも、カトリーナと同じ規模のハリケーンの直撃を受ければ持ちこたえられないと言われている現状を考えると、どこまで海面上昇への対応策・適応策を講じることができるのか、疑問を抱かざるを得ません。ハリケーン「カトリーナ」で浮き彫りになったように、ニューオーリンズもまた、低所得者層、特に海抜の低い沿岸地域やミシシッピ川沿いに住む人たちへの影響が懸念されます。ニューオーリンズの場合は、将来的な海面上昇後が心配というよりも、今が心配です。
ここまではアメリカの海岸線に位置する主要都市を見てきましたが、日本の海岸沿いに位置する大都市圏はどうなるのでしょうか?
残念ながら、日本では上の地図のような試みをしているウェブサイトはないのですが、Global Sea Level Rise Mapで、海面上昇で水没する地域を、何メートル上昇するかによって見ることができます。
下の地図は、海面が6メートル上昇した場合、東京、大阪、名古屋、福岡の各都市がどうなるかを表したものです。
東京
大阪
名古屋
福岡
日本は、6メートルの海面上昇で影響を受ける国土が全体の3%で、世界17位です。現在の人口の約16%(同3位)、2100万人(同6位)が海抜6メートル以下の場所に住んでいます。大都市では、大阪市が410万人(人口の25%)で、影響を受ける人が世界で10番目に多く、東京が380万人(15%)で12番目に多くなっています。
現時点に置き換えると、海面が6メートル上昇した場合、日本の人口の約6人に1人が住む場所や働く場所を失うことになります。そしてこれは、気温の上昇を2℃に抑えることができた場合です。このまま何もしないと、2100年までに気温は3℃から5℃上昇する可能性があるといわれており、そうなると海面は9メートルから15メートル上昇することになります。
数十年後、数百年後、数千年後の世代に、どんな世界を残すことができるのでしょうか?そのために、私たちの世代に何ができるのでしょうか?
【訂正】
初稿では『では、もしも今後数百年から数千年かけて海面が6メートル上昇した場合、海岸付近の都市はいったいどうなるのでしょうか?』と、海面上昇を6メートルとしていましたが、Climate Centralのレポートによると、気温が2℃上昇した場合は4.7メートル、4℃上昇の場合は8.9メートル海面が上昇するとしており、米主要都市の海面上昇比較地図では、それぞれの海面上昇がそのように設定されています。
【関連記事】
【参照】
Sea Levels Could Rise At Least 20 Feet|Climate Central
Coastal Nations, Megacities Face 20 Feet of Sea Rise|Climate Central
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