海面が6メートル上昇するとどうなるのか?という記事で、Climate Centralのマッピングツールを用いて作成された、気温が2℃上昇した場合と、4℃上昇した場合の、米主要都市における海面上昇の比較地図を掲載しました。
Climate Central の最新のレポートによると、現在と変わらず二酸化炭素排出を続けると、気温は4℃上昇するそうです。
このレポートでは、気温上昇を1.5℃、2℃、3℃、4℃の4つのシナリオに分け、それぞれの気温上昇で世界の国々の国土や主要海岸都市が受ける影響について報告しています。
Credit: Climate Central(以下テーブルはすべてClimate Centralのレポートより)
上の表は、気温上昇のシナリオごとに、どれだけの海面上昇が保証されているのかと、それよりも海抜の低い場所に住んでいる人の数(単位は百万人。人口は2010年の数値が基準)をまとめたものです。どちらも数値の幅は信頼水準66%に基づいています。
これまで通りに二酸化炭素を排出して気温が4℃上昇した場合、確実に上昇する海面は8.9メートル(6.9メートルから10.8メートルの中間値)で、6億2千7百万人が海岸沿いでそれよりも低い場所に住んでいます。気温上昇を2℃に抑えると、海面は4.7メートル上昇し、それよりも低い場所で生活する2億8千万人が影響を受けます。逆に考えると、努力をすれば3億4千7百万人が影響を受けずにすむことになります。
この表は、人口2,500万人以上の国で、気温が4℃上昇した場合に海面上昇の影響を最も受ける人口が多い上位20ヶ国をリストにしたもので、それぞれ気温が2℃上昇した場合と比較してあります。
日本は気温が4℃上昇(海面が8.9メートル上昇)すると3,400万人が、2℃の上昇(4.7メートルの海面上昇)では1,800万人が影響を受けることになり、両者の差は1,600万人(表で1,700万人となっているのは四捨五入すれば1,700万人になるということだと推測します)です。決して小さな数字ではありません。そしてこれは世界で6番目に多い数字となっています。
そして、この人口3,400万人は、日本の総人口の27%にあたります。つまり、気温が4℃上昇すると、4人に1人以上の割合で海面上昇の影響を受けるということです。影響を受ける人口の割合では、人口2,500万人以上の国の中で、日本は3位に位置しています。日本よりも高い割合で影響を受ける国は、ベトナム(52%)とバングラデシュ(32%)だけです。
次に、海面上昇の影響を受ける大都市圏を見てみましょう。上の表は、気温が4℃上昇した場合に海面上昇の影響を受ける上位20の大都市圏です。2010年の人口で、1千万人を超える大都市圏が対象になっています。
気温が4℃上昇すると、東京で750万人(人口の30%)が、大阪で620万人(38%)が影響を受けます。東京で10人中3人、大阪はほぼ5人に2人が影響を受けることになります。2℃上昇の場合でも、影響を受ける人は東京が420万人(16%)、大阪も同じく420万人(26%)です。東京で約6人に1人、大阪は4人に1人以上が影響を受けることになります。
これまでの表に並べられているのは、人口2千5百万人以上の国と、人口1千万人以上の大都市圏だけです。
海抜が低いインド洋や南太平洋、カリブなどの島しょ国の人々はどうなるのでしょうか?
マーシャル諸島は人口の93%、ケイマン諸島は88%、ツバルは81%、キリバチは77%、バハマ諸島は76%、モルディブは73%の人たちが影響を受けます。
島しょ国だけではなく、海抜が低い国々を見ると、スリナムが84%、ガイアナでは72%、オランダは67%の人たちが影響を受けることになります。
ここまで「影響を受ける」という表現を用いてきましたが、「水没する危険がある場所に住んでいる」「移住しなければいけない可能性が高い場所に住んでいる」という表現でもいいでしょう。数百年から数千年先の世界で海面上昇に直面する人々は、「影響を受ける」などという余裕のある表現は使わないでしょう。
私たちが生きている間に、これだけの海面上昇が起きることはないでしょう。でも、今後1メートルから数メートルの海面上昇で影響を受ける国や地域に暮らす人や、数十年、数百年、数千年先の世代の問題だからと、他人事として捉え、何もせずにこれまで通りの生活を続けるのは、人道上の罪なのではないでしょうか。
最後に、東京と大阪の、気温が2℃上昇した場合と4℃上昇した場合の海面上昇の比較地図を掲載しておきます。地図は、ドラッグしたりズームイン、ズームアウトできるので、地域を絞ってみることができます。
地図右上の矢印をクリックして、別窓に最大化してご覧になることをお勧めします。
東京
大阪
【あわせて読んでほしい記事】
この記事へのコメント