2015年の平均気温が産業革命前を1℃上回るという見通しを、 英気象庁が発表しました。もしも実現すると、年間の平均気温が史上初めて産業革命前比1℃を超えることになり、歴史的な出来事となります。
Credit: Met Office
英気象庁の気温データでは、今年の1月から9月の世界平均気温が産業革命前(1850年から1900年までの平均気温)と比較して1.02℃上回っており、エルニーニョ現象がまだピークを迎えていないことから、このまま1℃以上産業革命前の気温を上回ることになりそうです。
ただ、今年の平均気温が高いのは勢力の強いエルニーニョ現象によるところが大きく、また、来年の春まではエルニーニョ現象が継続する見込みのため、来年の平均気温も高くなると思われますが、1998年のエルニーニョ現象の後がそうであったように、2017年以降に平均気温が今年よりも一旦低くなることも考えられます。でも、それはエルニーニョ後の一時的な現象で、長期的に見れば気温の上昇傾向は今後も続く見込みで、今後数年のうちに「産業革命前比1℃超え」が常態化することになると思います。
80万年前から現在までの大気中の二酸化炭素濃度の変化(単位: 千年)
Credit: Mashable
また、2013年5月に過去80万年で初めて400ppmを超えた二酸化炭素濃度は、2014年4月に1ヶ月の平均濃度が400ppmに達しました。二酸化炭素濃度は季節によって上下を繰り返すため、現在のところまだ400ppmを切る時期もあり、これまでに1年間の平均濃度が400ppmを超えたことはありませんが、それも長く続かないと考えられています。
先ほども述べた通り、今年は大変強いエルニーニョ現象が起こっています。このエルニーニョが、二酸化炭素濃度を上昇させる可能性があるのです。
Credit: Climate Central
上のグラフは、1996年中旬から1999年中旬までの二酸化炭素濃度のグラフです。通常、北半球では二酸化炭素濃度が、植物の成長期が終わる9月に最も低くなり、植物が成長期に入る春にピークを迎えます。1997年から1998年までのエルニーニョ現象によって、1997年9月から1998年9月の1年間で、二酸化炭素濃度が3.7ppm上昇しており、これはその直前の1年間(0.74ppm上昇)の5倍です。
もしも1997年から1998年にかけてのエルニーニョ現象発生時と同じように、今回のエルニーニョ現象が終わると予測されている来年に二酸化炭素濃度が大きく上昇するようであれば、観測史上初めて年間の二酸化炭素濃度が400ppmを超えることになるかもしれません。
気温上昇が0.9℃から1℃になったからといって、すぐに大きな変化は起こりません。二酸化炭素濃度も同じで、399ppmから400ppmに上昇しても異常気象が急激に増加することはありません。たかが1℃、たかが二酸化炭素濃度400ppmと思うかもしれませんが、注意深く世界で起こっている気象現象を観察すれば、その影響が決して小さくないことを感じることができると思います。二酸化炭素濃度の上昇も、気温の上昇も、ほとんどが人間活動によるものです。
そして、今後数百年から数千年の間、その影響が今よりも小さくなることはないのです。
【参照】
Global climate in context as the world approaches 1°C above pre-industrial for the first time|Met Office
El Nino Could Push CO2 Permanently Above Milestone|Climate Central
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