地球温暖化の心配をしているアメリカ人は、4人に1人以下

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  以前、米国民の約半数が人為的地球温暖化に同意しているという記事を書きましたが、今回、AP通信社が行ったアンケート調査によると、65%が「地球温暖化は起こっている」と答え、その原因について51%が「すべてまたは大半が人間活動によるもの」、35%が「人間活動と自然現象が同じくらい原因になっている」と答え、人為的地球温暖化に対する理解は、以前よりも深まってきている印象を受けます。

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  しかしながら、「どれくらい地球温暖化について心配しているか?」という問いに対して「極めて/とても心配している」と答えた人はわずかに23%、「やや心配している」が34%、「ほとんど心配していない/全然心配していない」が38%と、人為的温暖化を認めつつも、深刻な心配はしていない人が多いようです。

  また、半数以上の人たちが地球温暖化を環境(82%)、科学(72%)、政治(55%)の問題と捉えている一方で、モラル/道徳(36%)、社会正義(25%)、貧困(14%)の問題と捉えている人は少なく、気候変動問題の表面だけを見て判断する傾向にあることもわかります。

  でも、これは報道のされ方、情報を発信する側の問題でしょう。気候変動が進むとどうなるのかという話になると、環境がどう変化するかという話になりがちですし、原因について伝えようとすれば科学的な話になります。そして、気候変動対策がトピックになれば、政治的な話になるのは当然の流れです。

  元々、格差や貧困、特に環境問題における人種差別(環境正義)のニュースがあまり伝えられない社会なので、国内の低所得層や貧困層、アフリカ系とヒスパニック系の有色人種が最も気候変動の影響を受けるという認識が広がるような報道がほとんどないのもまた当然なのかもしれません。
  米国内でもこの状況なのですから、世界に視線を移した場合に、経済力が低い開発途上国が先進国よりも気候変動の影響を受けるため、先進諸国はもっと経済的・技術的な援助をするべきという、気候正義の「同世代間の平等/公平問題」にまで考えを巡らせるのは困難でしょう。

  APの記事の中でも、地球温暖化が起こっていることを信じている女性が、「私の心配事のリストの中で、地球温暖化のランクは低いです。温暖化の話題は、遠い場所で起こっていることという印象があり、海面上昇も、きっちり何年かかるのかわからない。」と話しています。

  ホワイトハウス科学顧問のジョン・ホールドレン氏は、「気候変動を信じない人たちは、『温暖化の行く末は恐ろしすぎるから、信じないでおこう』と大げさに吹聴します。彼らは、信じられないほど効率的に疑念の種をまきます。」と話しています。

  カーネギー協会の気候科学者であるクリス・フィールド氏は「私たちは気候変動のインパクトに対し脆弱です。もしもあなたがイリノイ州の農業従事者か、アラバマ州で線路の敷設に従事しているか、ウェストバージニア州の炭鉱で働いていれば、あなたの人生は健康面や消費・購買などで気候変動の影響を受けるでしょう。」と語ります。気候変動による環境の変化は、様々な職種、特に気候の影響を受けやすい屋外労働がメインの産業や、冷房施設が暑さに追いつかない地域の屋内労働を要する産業と、それらの企業の労働者たちに多大な影響を与えます。

  気候科学者は、気候変動についての懸念を伝えるのが得意ではありません。コミュニケーション能力を兼ね備えた研究者はそんなに多くはないのです。

  「彼らは、気候変動についての論文や本などを出版したり、データを提示することが人々を説得するための最良の方法だと考えているのです。」と、テキサス工科大学の気候科学者で福音主義キリスト教徒でもあり、気候変動問題についてキリスト教徒と教会などを通じて頻繁にコミュニケーションをとっているキャサリン・ヘイホー博士は言います。理解してもらうことができるかどうか、成功の鍵は、人として共通する部分、共通の価値観を見出すことができるかどうかなのだと。また、彼女は「事実をたくさん並べるだけでは、問題は解決しません。気候変動問題に対して、地球上のすべての人が、それぞれの価値観で関心を持っています。それらの点と点を繋げる必要があるのです。」と、気候科学者のミーティングで語っています。

  まずは、私たちの日常生活に、家族や周囲の人たち、コミュニティにどのような影響を与えているのか、そして、今後どのような影響を与えることになるのかを認識することが、今はまだ「誰かにとっての問題」「いつか影響が出る問題」だと思っている地球温暖化を、「いま起こっている自分に直接関係する問題」として真剣に考え、周囲やコミュニティ、自治体や国単位、国際社会と協力して気候変動対策に取り組むために必要な最初の一歩であると言えるでしょう。

【参照】
American Attitudes Toward the Pope Following His Visit to the United States|The Associated Press-NORC Center for Public Affairs Research

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