1997年から98年にかけて続いたエルニーニョ現象に匹敵する強さになるといわれてきた今年のエルニーニョが、今月から来月にかけていよいよピークの時期を迎えます。
Credit: NASA
このGIF画像は、1997年と今年のエルニーニョを比較したものです。太平洋赤道付近の赤い部分は、平年と比較して表面海水温が高くなっている地域です。こうして並べて見ると、ほぼ同じくらいの強さに見えます。
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Credit: Climate Central
「ニーニョ3.4」と呼ばれるエルニーニョの規模の指標になる地域(上の地図の黒で囲まれた地域)で、グラフのように、週間の平均表面海水温の偏差が史上初めて3℃に到達し、1997年のエルニーニョの2.8℃を上回り、未知の領域に入りました。
ただし、エルニーニョの強さは、週の平均表面海水温ではなく、3ヶ月間の平均で比較するのが通常です。下の表は、過去から今回のエルニーニョの8月から10月までの3ヶ月間の平均表面海水温が高い順番に上から並べたものです。週間の平均表面海水温では1997年のエルニーニョを超えましたが、3ヶ月間の平均では1997年が抜きん出ていることがわかります。
Credit: NOAA
エルニーニョは11月から12月にかけてピークを迎えますが、その後すぐに終わるわけではありません。通常は、翌年の春から初夏にかけてニュートラルに戻り、その後、エルニーニョとセットになっている逆の現象、ラニーニャ現象へと移行していきます。
Credit: International Research Institute
上のグラフと表からわかるように、米海洋大気局(NOAA)と米コロンビア大学の国際研究所は、2016年の5月から6月頃にエルニーニョ現象がニュートラルに戻り(表の「MJJ 2016」でニュートラルになる確率が52%で、エルニーニョの33%を上回る)、その後、緩やかにラニーニャ現象へと移行し始めると予測しています。
米南西部のテキサス州では、エルニーニョ現象時にこの地域の特徴である低温湿潤な天気がすでに始まっており、これから冬にかけて、平年と比較して気温が低く、降水量の多い天気が続きそうです。
同じくエルニーニョ時に降水量が増える南カリフォルニアにとっては、干ばつによる水不足が多少緩和するのではないかと予想されていますが、赤道付近だけでなくカリフォルニア沖の太平洋の表面海水温が記録的に高いため、通常よりも多い大気中の水蒸気がもたらす豪雨による洪水などの被害が懸念されています。
史上最強規模のエルニーニョと、気候変動による気温と海水温の高さが重なるため、エルニーニョ時に起こるといわれる気象現象が、どれくらいの規模や強さで起こるのか、誰にも予測できません。
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