テキサス州の一部地域で夜間の電力が無料に

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  テキサス州はアメリカの中でとてもユニークな州なのですが、それは州の成り立ちと関係しています。
  これまでの歴史の中で、テキサス州はスペイン、フランス、メキシコ、テキサス共和国、アメリカ連合国、そして現在のアメリカ合衆国に至るまで、「シックスフラッグス」と呼ばれる6つの国旗を経てきました。
  独立国家であった過去があるため、現在でも強い独立心を持っており、連邦政府の言うことに簡単に従わず(近年は大統領が民主党の場合は特に反抗的)、連邦政府ともめるとすぐに「連邦からの独立」を口にします(法律的には独立できません)。

  さて、テキサス州は元々そのように独立心が旺盛で、連邦政府からコントロールされることを嫌う特徴を持っています。それが、現在のエネルギー政策にも影響しています。1935年に州間をまたぐ電力の売買を連邦政府が監視するための「連邦電力法(Federal Power Act)」が制定される際に、「州をまたがなければ連邦政府のコントロールを受けずにすむ」という理由から、テキサス州は電力グリッドを他の州と繋がずに独自の規格にしました。そのため、電力が不足しても他の州から融通できず、他の州へ売電することも不可能という、なんともテキサス州らしい状況になっています。

  また、テキサス州といえば、多数の石油企業が本社を置いていたり、近年はシェールブームで天然ガスの生産量が豊富であったりと、化石燃料、オイル・ガス産業の州というイメージが強いのですが、先日の記事でも触れたように、全米一の風力発電量を誇ります。

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  テキサス西部の広大な土地(主に農地や牧場)に、風力発電ファームが広がっており、ダラスなどの大都市圏へ送電しています。しかし、風力発電に適した土地で大量に発電するため、電力消費量が減る夜間になると電力が余ってしまいます。隣接する州に送電することができれば売電することも可能なのですが、独自路線を突き進んでしまっているため、消費できない状況に陥ってしまっているのです。

  で、ダラス圏の一部の電力会社が、夜間9時以降の電気を無料にするという事態になっています。顧客は無料で電気を使え、電力会社は顧客が増えるというWin-Winの関係が成り立っているというわけです。

  しかし、独自の電力網は、災害等で万が一麻痺状態に陥ってしまった場合に他州からの援助を受けることが困難になるため、州民のことを考えるのならば、意地を張らずに他の州と同じ規格にした方が賢明だと思うのですが、たぶんテキサス州が考えを変えることはないでしょう。

【参照】

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