米政府はいつから温暖化の深刻さを知っていたのか

  1992年にUNFCCC(国連気候変動枠組条約)が設立し、1997年に京都議定書が採択され、気候変動、地球温暖化に対する国際的な認識は高まっていきましたが、一般の人たちに地球温暖化という言葉が広く知られるようになったのは、アル・ゴア元米副大統領とIPCCがアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー映画、「The Inconvenient Truth(不都合な真実)」が2006年に上映された後からではないでしょうか。

  これまでに世界で最も多くの二酸化炭素を排出してきたアメリカは、京都議定書の批准を拒否しましたが、米政府と産業界は共に1960年代から70年代に地球温暖化の深刻さを理解していたにもかかわらず、気候変動対策を怠ってきました。


  また、報告書では、数年後には気候モデルが未来の地表の気温を予想できるようになるとも伝えており、実際に、報告書作成者のひとりであるウォーレス・ブロッカー氏は、1974年に地球温暖化に関する研究結果を発表しました。

  近代アメリカの環境保護に関する法律に大きな影響を与えた「Clean Air Act of 1963(大気浄化法)」を制定した、民主党出身のジョンソン大統領でしたが、気候変動対策を検討実施することはありませんでした。

  その後、時代は進んで共和党出身のドナルド・レーガン大統領、ジョージ H. W. ブッシュ大統領(父ブッシュ)時代にも、地球温暖化の深刻さは警告されていました

  先日、米情報公開法に基づいて公開された、レーガン、ブッシュ政権当時に政策顧問から大統領に送られた機密文書には、国際的な環境問題、気候変動問題について、積極的な対応を促す内容の言葉が綴られていました。

  ブッシュ大統領宛の文書は、「(気候変動は)憂慮すべき結果を招くことになる。科学的疑問が解決するまで、行動を起こすのを待つことはできない。」と警告していました。

  公開された11の文書からは、1980年代から90年代にかけて、レーガン、ブッシュ両政権が、オゾン層問題や気候変動問題に関し、国際的な流れに反し、政策顧問たちの進言を無視する形で、対応策にことごとく反対する様子が見て取れます。

  環境政策に対する共和党のこのような姿勢は現在も変わることなく続いており、「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」で法的拘束力を持った国際合意に至ったとしても、上下院共に多数を占める共和党議員たちは、国内法にそれを反映させないと宣言しています。また、これまでにオバマ政権が決定した、石炭火力発電所からの二酸化炭素排出量を厳しく制限する気候変動対策を廃止に持ち込もうとするなど、徹底した姿勢を打ち出しています。

  共和党のこのような気候変動問題に対する頑なな姿勢は、産業界の意向が大きく関わっているのですが、その話は別の記事にしたいと思います。

  アメリカの気候科学者たちが米大統領に初めて気候変動の深刻さを警告してから50年。遅きに失した印象は拭えませんが、遅すぎることはありません。

  アメリカには、自国内での積極的な気候変動対策の推進と共に、(概ね裏切られることになるのはわかってはいるものの)世界の真のリーダーとしての働きが期待されます。

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