石油大手エクソンモービル社が1960年代から70年代に地球温暖化の深刻さを知りながら、気候科学の不確かさを誇張するキャンペーンの展開によって気候変動対策を妨害してきた歴史について記事を書きましたが、先日、どのようにしてエクソンモービル社を始めとする化石燃料産業が世論と政界に影響を与えてきたのかを明らかにする研究結果が発表されました。
執筆者である米エール大学のジャスティン・ファレル氏は、まず気候変動の科学を否定する情報を拡散する組織や企業構造を分析し、報道機関や政界に対する影響力を解析。反対運動に関与している4,556人の個人と164の団体で構築されたネットワークが、1993年から2013年までにネットワーク内で法人後援者から資金提供を受けた団体を割り出しました。
そして、同期間にそれらの個人や団体が作成した40,785点の文書と、大手メディア3社(ニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙、USAトゥデイ紙)、米大統領、米議会の気候変動に関する25,000点の文書をコンピューターによって比較解析したところ、特定の企業や法人などのコネクションを持たない場合よりも、情報を拡散している個人や団体が資金援助を受けている場合の方が、気候変動の科学を否定するメッセージが報道される可能性が高くなることが明らかになりました。
また、研究では、化石燃料大手のエクソンモービル社とコーク産業の経営者が出資しているシンクタンクなどから財政援助を受けている個人や団体による影響力が大きいことも指摘しており、大手企業や富裕層が豊富な資金力を用いることで科学や政治を私物化し、富裕層へのさらなる富の集中に幅広い影響力を及ぼすことになると結論づけています。
Credit: Guardian
エクソンモービル社は、社内の科学者間で気候変動が及ぼす影響の深刻さについて共通認識を持っていながら、気候変動に疑問を投げかける個人や団体に対して1998年以降3100万ドル(約38億円)の資金援助を行ってきました。
また、コーク産業の経営者であるチャールズ・コークとデビッド・コークの「コーク兄弟」は、2016年の選挙で8億8千9百万ドル(約千億円)を投入予定といわれています。
今回の研究結果は、石油産業を始めとする一部の富裕層が富にものをいわせて科学や政治を私物化しているという、これまでジャーナリストによって伝えられてきた事実を裏付けるものであるといえるでしょう。
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