COP21が開催されている会場の外で気温上昇の目標を1.5℃未満にするよう訴える人々
Credit: The Hindu
「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」も後半に入り、合意文書の内容もページ数が短くなってきました。ある程度の法的拘束力を持った合意がなされるであろうという楽観的なムードが漂っています。
でも、開催初日に後発開発途上国が相次いで表明した危機感が反映されたものになっている印象は受けません。なぜなら、彼らが発信するメッセージのトーンは大詰めを迎えようとしている現在も変わっていないからです。
ここにきて、開催国フランスのファビウス議長が、新枠組みの合意案に気温上昇の従来の目標である「2℃未満」に加えて、島しょ国の主張を反映させる形で「1.5℃未満」に抑える内容についても明記しました。
Barbados: a 2C goal is "not acceptable." "we won’t sign off on any agreement that represents a certain extinction of our people” #COP21
— Andrew Freedman (@afreedma) December 9, 2015
カリブの島国、バルバドスの代表は、2℃未満の気温上昇に抑えるという目標について、「容認できない。我々の国民の絶滅を意味するいかなる合意案にも署名はしない。」と強く否定しています。
島しょ国や海面上昇の影響を受けやすい(すでに受けている)海抜の低い国々にとって、この0.5℃は死ぬか生きるかの違いなので、合意案に1.5℃未満が明記されること自体はいいことだと思います。
しかし、この1.5℃未満という目標値が、先進国から提案されたものではないことに違和感を覚えるのです。先進国の主要都市の多くは沿岸に位置しており、ハリケーンや熱帯低気圧発生上陸時の高潮による洪水など、すでに海面上昇の影響を受けていますし、今後さらに深刻な気象現象の影響を受けることになるといわれています。
アメリカではニューオーリンズやマイアミ、ニューヨーク、日本では東京や大阪などが2℃の気温上昇による海面上昇で大きな影響を受けるのは、以前記事にした通りです。
「2℃未満」の目標では気候変動による深刻な被害が出る可能性が高いのは、アメリカや日本をはじめとする先進諸国でも同じはずなのに、まるで他人事のように「1.5℃未満」という主張に強い関心を示そうとはしません。先進国で「1.5℃未満」の目標を自主的に支持する姿勢を見せたのは、議長国であるフランスと、保守からリベラルに政権が変わったカナダだけで、アメリカやEUは途上国からの強い主張を受けて、途上国への拠出金との駆け引き材料として1.5℃未満の明記を受け入れる姿勢を見せているものの、依然として消極的な慎重論も聞こえてきます。
COP21開催日の演説で太平洋の沈みゆく島しょ国ツバルの大統領が「みなさん、今こそ一緒に立ち上がって私たちの未来を築くときです。ツバルのためにやりましょう。ツバルを救うことができれば、間違いなく世界を救うことができます。」と訴えかけました。
でも、それではいけないのです。今こそ、先進諸国が立ち上がってリードするべきときなのです。先進諸国が自国民への深刻な影響を防ぐためにありとあらゆる手段を用いて本気で気候変動対策に取り組むことが、島しょ国などが今後受けるであろう深刻な被害を未然に防いだり軽減することに繋がるのです。
残念ながら、先進諸国からそのような緊張感や使命感は伝わってきません。気候基金への拠出金で途上国に対して歩み寄りを見せながら、実際のところはできる限り気候変動対策を先延ばしにしようとしているように映ります。
COP21も残すところあと3日になりました。「成功と呼んでもいいかな」と思える合意内容にどこまで近づくことができるのかを見届けたいと思います。
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