米環境系メディア「インサイド・クライメート・ニュース」によるエクソンモービル社の長年に渡る気候変動対策への妨害工作に関する特集記事についての記事を書きましたが、インサイド・クライメート・ニュースに続いて、ロサンゼルスタイムズ紙もエクソンモービル社の気候変動に対する表向きの態度と内部での動きの矛盾について詳細を報じていました。
その一連の記事は、ロサンゼルスタイムズ紙とコロンビア大学のジャーナリズム学部のコラボレーションによるもので、記事執筆には、同大学の学生が加わっていました。
すると、それらの記事が「不正確かつ誤解を招く内容」という理由で、エクソンモービル社がコロンビア大学宛てに抗議の文書を送ったのですが、その文書を米ポリティコ紙が入手して公開しました。
エクソンモービル社は自身の基金を通じ、研究費などの名目でコロンビア大学に昨年度は20万ドル(約2,460万円)の寄付をしており、同大学の理事長宛に送付した文書には、暗に今後の対応次第で寄付の見直しを検討すると受け取れる内容の文章が書かれていました。
同大学ジャーナリズム学部長で、ロサンゼルスタイムズ紙に掲載された一連の記事に関するスーパーバイザーを務めたスティーブ・コール氏は、今回のエクソンモービル社のケン・コーヘン広報・政府業務担当責任者からの抗議文書に対し、反論する文書を公開し、その中で「あなたの申し立ては証拠に基づかないものであると断定しました。それ以上に、あなたもしくはあなたの同僚であるメディア広報窓口が所有するメールの記録があなたの申し立てが間違いであると示しているにもかかわらず、(一連の記事を書いた)プロジェクトチームに職務上の規律違反行為があったとして深刻な申し立てをする理由を見つけるのに骨を折らされています。」と述べています。さらに、文末では、プロジェクトチームによる記事がロサンゼルスタイムズ紙に掲載される前にエクソンモービル社に行い無視された質問への回答を促すとともに、エクソンモービル社のプロジェクトへの参加を歓迎する旨を伝えています。
今回のエクソンモービル社による大学への抗議のような行為は、石油産業だけでなく、たばこ産業なども国民に対して印象操作をするために長年に渡り繰り返し用いてきた手段で、科学的事実(喫煙が肺がんの原因になるなど)に対して疑問を投げかけたり、自社に関する報道に対して抗議することで一般市民にアピールするのが目的で、その結果がどうなるかは彼らにとってあまり関係ないのです。事実を根拠にした反論ができないと判断すると(そもそも事実を根拠にせずに気候科学の不確かさを誇張してきたので反論できることは何もない)、自社に不利な情報を発信している相手の信用を貶めるための行動に出ます。今回の大学に対する抗議文書の送付はそのいい例です。また、抗議文書を送付することで、相手が萎縮して自社に不利な事実を発信しにくい空気を醸成することが目的でもあります。
大学やメディアの報道にまで影響力を及ぼそうとする企業の横暴を許してはならないと思います。
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