気候変動による海面上昇が原因で、将来的に一部の国民が移住しなければならない状況に追い込まれているインド洋や南太平洋の島しょ国ですが、問題解決の糸口を見つけることすら難しいのが現状です。そして、その原因は先進諸国の政治によって問題を解決する意識の欠如です。
「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」では、島しょ国のリーダーたちが危機感漂う演説を行いました。彼らにとって、気候変動は国と民族の存続をかけた問題であり、未来ではなく、現在既に起こっている問題だから当然です。
南太平洋の島しょ国の中では、すでにソロモン諸島の人口約1,000人の村が丸ごと隣接する島へ移住する計画が、オーストラリアとイギリスのサポートを受けて進められています。これは、南太平洋の島しょ国では初めての、気候変動の影響による本格的な移住計画です。
その他にも、フィジーでは数十の村が、パプアニューギニアでは2,000人の村が将来的な移住を計画しています。
また、キリバチは気候変動による国民の移住が自国領土内ではすまない最悪の事態を想定して、フィジー国内に20平方キロメートルの土地を購入しています。しかし、そこにこれまで彼らが生活の基盤にしてきた海はありません。内陸部の海のない場所です。
気候変動による移住を余儀なくされる人たちは、自分たちに落ち度がないにもかかわらず、先祖代々受け継いできた島と文化を奪われ、最悪の場合は生活様式がなにもかも違う別の国で、ゼロから新しい生活を始めなければならないのです。
そしてそんな彼らにとって最悪なのは、気候変動の影響によって、本人の意思とは無関係で移住を余儀なくされる「気候難民」や「気候移民」の問題を解決するための国際社会による組織がないことです。
COP21の開催を前に、南太平洋諸島の国々は国際社会に対し、気候変動の影響による移住問題を専門的に取り扱う国際機関の設立を呼びかけ、COP21で「気候難民」「気候移民」を議題として取り上げるように要求してきました。彼らの要求をアメリカやイギリス、フランスなどが受け入れる姿勢を見せたため、一時的に議題として取り上げる計画もあったのですが、南太平洋諸島に最も近く、世界4位(2012年時点)の石炭採掘国でもあるオーストラリアの強い反対によって議題から外されてしまいました。
南太平洋の島しょ国のリーダーたちによる、怒りにも似た危機感溢れるCOP21での演説には、このような背景があったのです。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、気候変動の影響によって、2050年までに世界中で約2億5千万人が移住しなければならなくなると警告しています。そして、それはもう既に起こっているのです。それなのに、気候難民や気候移民問題を専門的に扱う国際機関が存在しないのは、無責任なのではないでしょうか(気候変動が無責任による産物なので当然と言えば当然なのかもしれませんが)。
温暖化の原因を作ってきた加害者である先進諸国の事情によって、温暖化の影響を最も受けている国々の救済措置が決められていくことの不公正、不公平さに違和感を覚えずにはいられません。
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