COP21「パリ協定」で知っておくべきこと

  パリで開催されていた「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」は会期が1日延長されたものの、大方の期待通り「京都議定書」に続く「パリ協定」に、190を超える参加国が合意、採択されました。

  「パリ協定」で知っておくべきことを挙げておきたいと思います。

1.  すべての参加国が二酸化炭素排出量削減義務を負う
  京都議定書では発展途上国と先進国に責任の差があり、それが国際的な気候変動対策の合意の障害になってきました。新たな「パリ協定」では、二酸化炭素排出量削減に関する責任の重さの違いはなくなり、先進国だけではなく、途上国に対しても温室効果ガス削減による気候変動対策への取り組みが義務づけられました。

2. 2100年までの気温上昇の目標を厳しい数値に設定
  2100年までの気温上昇を産業革命前の「2℃未満」に抑えるというこれまでの国際的な目標に対し、パリ協定では「2℃を大きく下回る数値」を目標とし、「1.5℃未満」に抑えるための努力を行う、というより野心的なものになりました。

3. どうやって「2℃を大きく下回り1.5℃を目指す」という目標を達成するのか
  パリ協定に合意した各国が「可能な限り早く世界的な二酸化炭素排出量のピークに辿り着く」という抽象的な表現に留められており、具体的に何年までにピークを迎えるという目標は明記されていません。そして、「その後、最善の利用可能な科学を駆使し、人間活動による二酸化炭素排出量と、自然の吸収による大気からの二酸化炭素の除去により、今世紀後半の急速な二酸化炭素濃度の減少に取り組む」としています。

4. 進捗状況の把握と法的拘束力
  参加各国には、2023年より5年ごとに「Intended Nationally Determined Contributions (INDCs)/各国が自主的に決定する約束草案」と呼ばれる気候変動対策の目標の見直しが義務づけられ、より野心的な目標へと移行することが求められます。5年ごとの目標の見直しは法的拘束力を持ちますが、二酸化炭素の削減目標については各国が独自の目標を設定することになり、法的拘束力はありません。そして、各国が提出したINDCsの目標を達成したとしても、今世紀末までに気温が約3℃上昇すると言われており、今後の削減目標は一層野心的なものでなければなりません。

5. 脱化石燃料に向けての大きな一歩
  パリ協定には「化石燃料」という言葉が一度も登場せず、具体的には言及されていませんが、可能な限り早く炭素ニュートラルを果たすということは、長期的には化石燃料の使用を限りなくゼロに近づけることを意味します。また、今世紀半ばまでに炭素ニュートラルを果たさない限り、目標である「2℃未満」の達成は不可能と言われており、産業革命以降、エネルギーの主幹として君臨してきた化石燃料を手放し、新しいエネルギーに移行する決意の表れでもあります。しかしながら、化石燃料産業が黙ってフェードアウトしていくことは考えられません。また、長期的には化石燃料からの脱却を訴えてはいるものの、世界中で石炭火力発電所の建設計画が進められており、それらが稼働した場合、2030年までに「2℃未満」に抑えるための限度を4倍上回る量の二酸化炭素が排出されるという研究結果があるなど、相当困難な作業になると思われます。

6. ロス&ダメージが明記される
  かねてより途上国から強い要望があった「ロス&ダメージ」が、パリ協定の中で明文化されました。しかし、異常気象や、海水温上昇と氷床融解による海面上昇が原因の被害などを可能な限り抑えることの重要さを認識するという抽象的な表現で、具体的な被害に対する補償については言及されておらず、途上国側は参加国(先進国と一部の裕福な途上国)が拠出する気候基金から、気候変動に適応するために必要な資金援助を受けることになり、気候変動の原因を作ってきた先進諸国の責任を追及することはできません。これは、金銭的な責任を追及される可能性のある法的拘束力を持った協定に合意した場合、議会の承認が必要になり、実行不可能になってしまうアメリカの強い要望によるものであり、「1.5℃未満」と「ロス&ダメージ」の条文をパリ協定で明文化させるために、途上国が諦めた部分でもあります。

7. 気候基金
  2009年のコペンハーゲンで設立した緑の気候基金に、2020年までに年間1千億ドル(約12兆3千億円)を拠出、2025年以降はそれ以上を拠出、という部分は変更されていませんが、この拠出額についても法的拘束力は持っておらず、どの国がどれだけの拠出をするのかなどの詳細は決められていません。途上国の気候変動への適応と、クリーンエネルギーへの移行に基金から資金が援助されるという抽象的な表現に留まっています。しかし、英オックスファムの報告では、途上国が気候変動に適応するために必要な額は、1年当たり最大で8千億ドル(約98兆4千億円)になるとされており、基金が十分に機能するのか、先行きは不透明なままです。



  200近い国が合意することを前提に集ったこと、先進国と途上国が衝突しながらも、ここを第一歩にという強い意志を持って合意したことについては、コペンハーゲンの悲惨な幕引きを経験した者としては、歴史的な出来事だったと言えます。

  パリ協定は、実行されるまではあくまでも「約束」でしかありません。先ほども述べた通り、現段階でのINDCsを達成しても気温は約3℃上昇します。COP21開催前に今より2℃の気温上昇(産業革命前比約3℃上昇)に繋がるような低い目標しか設定していなかった世界の国々が、その目標をさらに1℃から1.5℃下回るためには、並々ならぬ覚悟と努力が必要となります。

  しかし、この結果には、各国政府そして国際社会に気候変動対策実施を呼びかけ、プレッシャーを与え続けてきた、私たち世界市民の声も反映されていると考えてもいいでしょう。ここから先、各国が目標達成のために必要な努力を続けていくことができるのか。私たち世界市民には、それを見届けさらなる働きかけを行う責任があります。

  私たちが生きる場所は、この地球以外にないのですから。

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