北極圏の気温が観測史上最高を記録

  米海洋大気局(NOAA)が発表した年次報告書「北極圏報告カード(Arctic Report Card)2015年版」によると、北極圏内陸部の平均気温の平年(1981年から2010年の)からの偏差が1.3℃を記録し、観測を開始した1900年以降で最も高い値になりました。

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Credit: NOAA

  上の地図の方は、2014年10月から2015年9月までの1年間の平均気温を平年(1981年から2010年)と比較してその偏差を表したものです。北極圏の極めて広い範囲で平年よりも気温が高くなっており、平年よりも2.5℃以上高くなっている地域もあります。

  地図の下のグラフは、北極圏(北緯60度から90度)の年平均気温(青)と世界の年平均気温(黒)を比較したもので、北極圏の気温の方が年によって上下の差が激しいことがわかります。注目すべき点は、世界の平均気温よりも、北極圏の平均気温の方が1900年以降大きく上昇しており、北極圏以外の地域と比較すると、北極圏は約2倍以上の速さで温暖化が進んでいることです。1900年以降、北極圏の平均気温は3℃上昇しています。

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  上のグリーンランドの地図は、夏期(6月から8月)に、何日間グリーンランドの氷床がとけているのか、平年(1981年から2010年)と2015年を比較したものです。平年よりも長い日数とけている場所は赤が濃く、氷床のとける期間が平年よりも短い場合は青が濃くなっています。グリーンランド西部では、氷床のとける期間が、平均で平年よりも30日から40日長くなっているそうです。グリーンランドの氷床がすべてとけると、海面が約7メートル上昇するため、急速な氷床の融解は深刻な問題です。

  また、北極圏の海氷の夏の最小面積は観測史上4番目に小さく、これで観測史上最小から9番目に小さい海氷面積の記録が過去9年間に集中しており、長期的な減少傾向が続いていることがわかります。

  海氷面積の減少も深刻ですが、年齢(氷齢)の高い、2回以上の夏を迎えた海氷の面積が減少しているのも深刻な問題です。氷齢の低い海氷は薄いためとけやすく、氷がとけると反射できる太陽エネルギーが減り、海水がその分エネルギーを吸収して海洋と大気の温暖化に繋がり、さらに海氷がとける「北極温暖化増幅」を加速させることになります。


  上の動画は、北極海における海氷の増減を表したものですが、氷齢がわかるようになっています。青い部分はその年にできた海氷で、白い部分は9年以上経過した海氷です。
  1985年には約20%の海氷が氷齢9年以上だったのに対し、2015年は約3%まで減少しました。また、その年に初めてできた海氷は、1980年代には全体の約50%でしたが、2015年3月には70%を占めるようになりました。北極圏の温暖化が進んでいることと、さらに気温上昇に対し脆弱になってきていることがわかります。

  北極圏の温暖化の影響は北極圏だけにとどまることはなく、中緯度地域の異常気象に繋がっています。今後も北極圏の温暖化が急速に進めば、ヨーロッパやアジア、北米で、熱波や豪雪などの異常気象が増加する原因になることが懸念されています。

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