【よくある間違い】マウンダー極小期が来る

  気候変動を否定する根拠らしきものとして、「マウンダー極小期(のような寒い時期)が来る」という説をよく見聞きするので、この主張を検証してみましょう。

  マウンダー極小期は、1600年代中盤から1700年代前半にかけて太陽の黒点が極端に減少したことによる太陽活動の低下の影響を受け、北半球の気温が低下した時期のことを指し、14世紀半ばから19世紀半ばまで続いた小氷期と呼ばれる期間の一部のことを言います。

Historical Total Solar Irradiance Reconstruction.jpg

  上のグラフは、1600年代初めから現在までの太陽放射量(Total Solar Irradiance: TSI)です。マウンダー極小期には、1平方メートル当たり1360ワットまで太陽放射量が減少しています。現在(直近3ヶ月)は、1360.5~1362ワットの間で推移しており、平均すると1361~1361.5ワットくらいです。このグラフからもわかる通り、1970年代以降、太陽放射量は低下傾向にあり、マウンダー極小期との違いは1~2ワットです。

  太陽放射線量が1ワット増減することによって気温は約0.1℃上下するため、マウンダー極小期の気温は、その前後と比較して約0.1℃から0.2℃、最大で0.3℃低かったと考えられています。

  また、今後仮にマウンダー極小期のような太陽活動の低下が起こった場合どうなるのかをシミュレーションした研究結果もあります(Feulner & Rahmstorf 2010)。

Feulner & Rahmstorf 2010 - Maunder_Minimum_Prediction.gif

  上のグラフは、IPCCの二酸化炭素排出量シナリオのうち、A1B(赤い線/高度経済成長が続き,世界人口が 21 世紀半ばにピークに達した後に減少し,新技術や高効率化技術が急速に導入される未来社会を想定。エネルギー源についてはバランスを重視し、いずれのエネルギー源にも過度に依存せず、すべてのエネルギー供給・利用技術の改善度が同じと仮定)とA2(ピンクの線/独立独行と地域の独自性を保持し、経済開発は主として地域主導)を用い、従来通り11年周期の太陽活動(実線)が続いた場合、極小期と同程度の太陽放射線量(破線)になった場合、そして極小期の放射線量をさらに低く設定した場合(点線)の、世界平均気温への影響を表しています。

  A1Bシナリオでは2100年までの気温上昇は3.7℃、A2シナリオでは2100年までに4.5℃とされています(それぞれの色の実線)。それに対し、A1Bシナリオにおいてマウンダー極小期と同程度まで太陽活動が低下した場合の気温低下は0.09℃、さらに放射線量が低くなった場合は0.26℃の気温低下という結果でした。A2シナリオの場合も結果にあまり変化はなく、それぞれ0.1℃、0.26℃でした。つまり、太陽活動の影響力は、温室効果ガスと比較すると著しく小さいと言えます。

  産業革命以降、地球の平均気温はすでに約1℃上昇しており、今後世界各国が目標通りの気候変動対策を実行したとしても、2100年までにさらに2℃以上の気温上昇が見込まれています。ここで取り上げたシナリオでは、今後2.5℃以上の気温上昇を推定しています。

  また、以前にも記事にしたように、太陽活動が低下傾向にあるにも関わらず気温上昇は続いており、今後、仮にマウンダー極小期のような太陽活動の低下が起こったとしても、人為的温暖化による気温上昇を帳消しにするような効果を期待することはできず、その影響は一時的に気温上昇を緩やかにする程度にとどまるでしょう。

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