気候変動対策に原発が必要という議論が再燃?

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               Credit: Bistrosavage

  「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」を契機に、「気候変動対策に原子力エネルギーが必要」という声が大きくなってきています。

  COP21開催中には、「地球温暖化問題の父」と呼ばれている、アメリカで最も有名な気候科学者、ジェイムズ・ハンセン氏らが、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるためには原子力発電の著しい拡大が必要という声明を発表しました。ただし、AFPの記事には書かれていませんが、ハンセン氏らが電源構成の中核に据えるべきと語っているのは、使用済み核燃料を燃料として再利用し、核廃棄物の発生量が著しく少ない「次世代原子炉」で、化石燃料からの脱却で生じる、再生可能エネルギーでは賄うことができない電力の溝を埋める役割を次世代原発が担うべきと考えているようです。

  また、マイクロソフト創設者のビル・ゲイツ氏は、COP21を前にFacebookのCEOであるマーク・ザッカーバーグ氏らと気候変動対策に取り組むための組織「Breakthrough Energy Coalition」を設立し、COP21開催中にはオバマ米大統領ら参加国の首脳らと共に「ミッション・イノベーション(Mission Innovation)」と呼ばれるプロジェクトを発表して注目を集めましたが、かねてより進行波炉(TWR)と呼ばれる最長100年間燃料(天然ウランか劣化ウラン)を交換せずに運転可能な次世代原子炉を開発するテラパワーの筆頭オーナーを務めるなど、次世代原子炉の実用化を目指しており、原子力発電が脱化石燃料・脱炭素社会の実現のための重要な役割になる可能性が考えられます。

  日本は、2015年7月に、政府が2030年の電源構成として原子力の比率を20~22%とし、今後も原子力を主要な電源と考えていることが判明しました。「パリ協定」で掲げた「2030年度に13年度比26%削減」という温室効果ガス削減目標達成を目指し、COP21後の政府原子力防災会議で安倍首相は「エネルギー供給を確保するためには原子力はどうしても欠かすことができない」と述べ、国内の原発再稼働に意欲を見せ、国外ではインドと原子力協定を結ぶなど、原発輸出にも積極的です。

  アメリカでは、シェールガスブームによって天然ガスの発電コストが下がり、太陽光と風力発電も予想以上の速さで電気代が下がってきたことから原発の競争力が低下していることに加え、新規原発の建設コストと老朽化した原発の安全対策コストが膨大になることもあり、新規に建設される原発を老朽化し廃炉になる原発が上回るであろうことから、現在約100基稼働している原発は今後減少していく見通しであると言われています。

  しかし、世界全体を見ると、計画中であったり政府によって認可された原発は、ここ1ヶ月以内だけでも南アフリカタイバングラデシュエジプトなどで相次いでおり、国際原子力機関(IAEA)が約30に及ぶ途上国が原発建設を真剣に検討していると述べるなど、今後アジアの発展途上国を中心に、原発の新規建設が増えそうな勢いを感じます。


  下のインタラクティブマップは、世界原子力協会のデータを元に、2011年4月時点において世界で稼働中、建設中、計画中、停止中、建設中断、廃止された原発を色別で表したものです。それぞれにチェックマークを入れて、時系列で追うことができます。地図も拡大可能です。


  COP21で採択された「パリ協定」の目標を達成するために努力を惜しまないという決意は世界が共有するべきだと思いますが、そのために原子力をはじめとする各電源が抱えている問題を置き去りにしたまま突き進むと新たな問題に繋がります。「発電時の二酸化炭素の排出量が少ない」という理由だけではなく、資源(発電に必要な燃料や発電装置の原材料)開発から発電、廃棄物処理、施設の解体廃棄、リサイクル(廃棄物管理)の過程における温室効果ガス排出量や公害問題、人権や倫理、モラルの問題が少ない「クリーンなエネルギー」を選択しなければ、結果的に未来の世代に負の遺産を残すことになるのではないでしょうか。

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