地球温暖化による水資源バランスの変化と水温の上昇が原因で、水によってタービンを回して発電する水力発電所と、発電時に生じる熱の冷却に水を用いる原子力発電所と火力発電所が影響を受け、時期によっては今世紀半ばに電力供給量が最大で約30%減少するという研究結果が、科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」に発表されました。
水力発電と水を冷却に用いる原子力・火力発電による電力の総供給量を a) 地域別の絶対値(単位: 百万メガワット/時)と b) 電力の種類と地域別の相対値(単位: %)で表したもの。データは2010年の米エネルギー情報局(EIA)による(Vliet et al. 2016)。
世界の総電力供給量のうち、発電時もしくは発電時に生じる熱を冷却するために水を用いる電力(水力/原子力/石炭・石油・ガス火力)が98%を占めています(上のグラフ参照)。しかし、気候変動による気温上昇で、地域によっては熱波や干ばつなどの水循環に影響を与える極端な気象現象の増加や激化が予想され、水を使用する発電方法への影響が懸念されてきました。今回の研究結果は、その問題に対するひとつの指標になると思われます。
論文の筆者らは、コンピュータモデルを用いて世界中の24,515の水力発電所と1,427の川や湖の淡水を冷却に使用する原子力と火力発電所に対して、現在よりも増加・激化すると予測される熱波が与える影響をシミュレーションしたところ、今世紀半ば(2040年~2069年)には、水力発電所の86%、原子力/火力発電所の74%で顕著な電力供給容量の減少が見られました。水力発電所で最も影響を受ける地域はオーストラリアで、南アフリカとヨーロッパが続きます。
水力発電は、年間で最大17%、水不足と水温の上昇が懸念される夏を含む暖かい時期には、電力供給量が最大で30%減少し、原子力/火力発電では、年間で最大12%の電力供給減、時期によっては3分の2の発電所で33%以上、発電量が容量に満たなくなるそうです。原子力/火力発電で気候変動による水資源バランスと水温上昇の影響を最も受ける地域はアフリカで、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアが続いています。
発電容量の減少は、電気代の高騰や停電の増加に繋がる恐れがあるため、高効率化や、淡水ではなく海水による発電・冷却、冷却システムの変更などで不足する分を補う必要があると筆者は述べています。
【参照】
Vliet, M. van, Wiberg, D., Leduc, S. & Riahi, K. Power-generation system vulnerability and adaptation to changes in climate and water resources. Nat Clim Change (2016). doi:10.1038/nclimate2903
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