ニューヨーク大学が気候変動に関して経済の専門家に行った調査によると、4分の3以上の専門家が他国の動向関係なくアメリカは気候変動対策を講じるべきと答え、他国も同様の行動をとった場合という条件付きを合わせると、95%が温室効果ガスの削減が必要と答えました。
調査は、1994年以降に信頼度の高い経済系学術誌に論文を発表している1,103人の専門家に依頼し、うち365人がオンラインで気候変動のリスクや気候変動がもたらす経済損失、必要な政策など15の設問に答えました。
主な回答は以下の通りです。
・オンライン調査に回答した専門家のうち、50%が「緊急かつ思い切った気候変動対策が必要」、43%が「すぐに何かしらの対策を行うべき」と答え、合計93%がすぐに気候変動対策を行う必要があるとしています。
・「気候変動が世界経済に負の影響を与える始めるのはいつか」という質問に対し、41%の専門家が「気候変動はすでに世界経済に負の影響を与えている」と答え、22%が「2025年までに」、26%が「2050年までに」と答えました。「気候変動が世界経済に負の影響を与えることはない」と答えたのはわずか2%でした。
・「他国の行動に関係なく、アメリカ単独でも温室効果ガス排出量の削減対策を講じるべき」と答えた専門家は77%、「国際的な取り決めの下にすべての国が対策を講じるならばアメリカも対策を行うべき(2%)」、「数ヶ国間で合意した場合に行うべき(10%)」「主要排出国が削減策を講じるならば行うべき(6%)」と合わせると、95%の専門家が温室効果ガス排出量の削減が必要であるとしています。
・気候変動によってアメリカが経済損失を受けることが予想される分野としては、農業(94%)、漁業(78%)、電力・上下水道・衛生管理などの公共事業(74%)、林業(73%)、旅行業・野外レクリエーション事業(72%)、保険業(66%)、医療サービス(54%)が大きな損失を受けると考えられており、影響を受けない分野を探す方が難しい印象を受けます。
・3分の2を超える専門家が、気候変動が経済成長の妨げになると答えています。
・75%の専門家が、米環境保護局の「クリーンパワープラン」に対して経済的に最も有効な手段は、連邦または地域レベルの市場ベースによるカーボン・トレード・システム(キャップ&トレードなど)か炭素税の導入であると答えています。
気候変動はよく経済の問題として語られ、野心的な気候変動対策は経済に悪影響を与えるという文脈で語る政治家が少なくないのですが、気候変動問題に詳しい経済の専門家の多くが、カーボントレードや炭素税などの温室効果ガス排出量削減策を迅速に行わなければ、気候変動による経済損失が広範囲に及ぶと考えており、今回の調査によって経済を優先しているはずの政治家との温度差が明らかになりました。いったい誰の経済を優先させているのでしょうか?
気候変動対策については、世界の78%の人たちが国際的合意の下に温室効果ガスの削減が必要と答え、また、アメリカ国民の69%も同様に考えており、市民の要望に応えるために、政府は速やかに気候変動対策を実施しなければなりません。
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