Credit: Waters et al. 2016
21世紀に入ってから、産業革命以降の人間による地球環境への影響度が著しく増大した時代を「Anthropocene(アントロポシン)/人新世」と呼ぶようになりましたが、公式な地質年代として認められているわけではなく、いつから始まったのかという定義もコンセンサスを得ていません。
今回、地質学者ら24人のグループが、人新世が始まったのは第二次世界大戦終戦後の1945年から1964年の間とする研究論文を科学誌「サイエンス」に発表しました。
この期間を人新世の始点とする根拠として、地層と氷床コアに蓄積された、それ以前には存在しなかった新たな物質や放射性核種、若しくは少量だった化学物質など、人間活動由来の気候、生物、地球化学的な痕跡を挙げています。
堆積物から発見された顕著な人間活動由来の物質や現象を以下に列挙してみます。
・新たな物質として、元素アルミニウム、コンクリート、プラスチック(1950年代に急増)
・化石燃料を燃やした際の副産物として黒色炭素、無機石炭灰、球状炭素質粒子(1950年頃から急増)
・森林開発と道路建設による土壌浸食
・残留農薬、PCB
・ガソリンの利用増が原因の鉛(1945年から1950年頃に急増)
・肥料の乱用によって土壌に含まれる窒素とリンが2倍に
・熱核兵器の実験による放射性炭素(Carbon-14)とプルトニウムの増加(1952年から1980年。ピークは1964年)
・化石燃料の使用が始まった1850年頃から増加し始めた二酸化炭素とメタンが、1950年頃から急増
・侵入や農業、漁業による生物の生息分布の変化と生物の絶滅率が高くなったことによる、生物学的な軌跡の恒久的な再構成
研究では、ここに挙げた例などが顕著になったのが、1945年から1964年の間としています。研究論文の執筆者のひとりは、「核実験によって排出されたプルトニウム(プルトニウム239)は、今後10万年にわたって土壌と氷床コアから検出されるだろう」と語っています。
人新世を生きる私たちが地球の姿を大きく変えてしまったことは以前にも記事にしました。また、私たちが今もなお排出し続けている温室効果ガスは、次の氷河期をキャンセルしてしまう可能性があります。そして、私たちの世代が地球に残した足跡は、本来ならば数百万年から数千万年かけて変わっていくはずの地質時代を、わずか数十年で劇的に変化させてしまうほど大きなものなのです。
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