直近20年間に海洋が吸収する地球温暖化による余剰熱の量が急増し、その35%を水深700メートルよりも深い海域が吸収しているという研究結果を、米ローレンス・リバモア国立研究所の研究チームが科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ」に発表しました。
この研究は、気候変動懐疑派が話題にする「温暖化ハイエタス」と呼ばれる、エルニーニョで異常に暑かった1998年以降に緩やかになった気温上昇の原因が、温暖化の停止や鈍化ではなく、温暖化による余剰熱を海洋が吸収しているためという最近の研究結果をサポートし、さらにそれらの研究よりも700メートルよりも深い海域が吸収している余剰熱の量が多くなっています。
この研究は、気候変動懐疑派が話題にする「温暖化ハイエタス」と呼ばれる、エルニーニョで異常に暑かった1998年以降に緩やかになった気温上昇の原因が、温暖化の停止や鈍化ではなく、温暖化による余剰熱を海洋が吸収しているためという最近の研究結果をサポートし、さらにそれらの研究よりも700メートルよりも深い海域が吸収している余剰熱の量が多くなっています。
Credit: Nuccitelli et al. 2012
上のグラフを見ればわかる通り、これまでの研究では、IPCCの第5次報告書が1971年から2010年までの40年間で増加した余剰熱のうち、60%を深さ700m未満の海洋の表層部分が、30%を700mよりも深い場所の海水が蓄えていると見積もっており、その他の研究でも同様の結果になっていました。
海洋が吸収した地球の熱容量の割合
Credit: Gleckler et al. 2016
今回発表された研究では、海洋が吸収している温暖化による余剰熱(温暖化の余剰熱の90%以上を海洋が吸収)のうち、約35%が水深700メートルよりも深い海域に蓄積されていることがわかりました。また、1865年以降の海洋による余剰熱の吸収の50%が1997年以降に起こっており、地球温暖化が最近約20年間で加速していることがわかります。そして、熱吸収が加速した時期は「ハイエタス」と呼ばれる気温上昇が緩やかになった時期と重なっています。
海洋による余剰熱吸収量の増加と、より深い海域の水温の上昇が海洋循環に与える影響などについては触れられていませんが、海洋循環は海水温と密度によって変化するため、今後の傾向が気になるところです。また、過去の研究(England et al. 2014)では、海洋が余剰熱をより吸収しているのは、赤道太平洋を東から西へ流れる貿易風がここ20年通常よりも強く吹いている影響であることを指摘していますが、この傾向が長く続くことはなく、ここ数年で太平洋十年規模振動が負位相から正位相へ大きく振ったことによって、海洋が蓄積してきた熱が大気に放出され、温暖化を加速させているのではないかと言われているのは、以前に記事で触れた通りです。
そして、太平洋十年規模振動が負から正へ移行したのと時を同じくして、2014年と2015年は2年連続で観測史上最高の平均気温を更新しており(2015年の12月の平均気温は気象庁の速報値による)、今後の動向が注目されます。
【あわせて読むといいかもしれない記事】
◆ 地球温暖化「ハイエタス」って何?
◆ 地球温暖化「ハイエタス」は本当か?
◆ 太平洋十年規模振動が温暖化を再加速させる可能性
【参照】
Gleckler, P., Durack, P., Stouffer, R., Johnson, G. & Forest, C. Industrial-era global ocean heat uptake doubles in recent decades. Nat Clim Change (2016). doi:10.1038/nclimate2915
Nuccitelli, D., Way, R., Painting, R., Church, J., & Cook, J. (2012). Comment on “Ocean heat content and Earth's radiation imbalance. II. Relation to climate shifts”. Physics Letters A, 376(45), 3466-3468.
England, MH, McGregor, S, Spence, P & Meehl, GA. Recent intensification of wind-driven circulation in the Pacific and the ongoing warming hiatus. Nature Climate … (2014). doi:10.1038/nclimate2106
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