スイスのチューリッヒに本拠を置く金融持株会社「ユービーエスグループ AG」の報告書によると、世界15ヶ国の主要215都市に暮らす中間所得層の支出の優先度を調査したところ、米ロサンゼルスや東京、上海などの気候変動による深刻な影響を受けやすい都市では、贅沢品や娯楽、耐久消費財に使うお金よりも、居住設備への支出の方が0.6%から0.8%多かったそうです。
2015年1月から6月までの、世界で自然災害によって大きな経済損失を受けた事例
Credit: UBS
報告書では、2015年の前半6ヶ月だけで、自然災害による死者は16,200人を数え、経済損失は320億米ドル(約3兆8千億円)に達しました。そのうち、保険でカバーされる損失は120億ドル(約1兆4千億円)に過ぎません。気候変動の影響を受けやすい都市で暮らす約10億人の中間所得層は、すでに熱波や海面上昇、豪雨や洪水、干ばつなどの極端な気象現象に適応するために生活様式を変え始めていると指摘しています。
ユービーエスグループの調査チームは、「収入の46%未満を食費と住居費に支出している層」を下限に、「レジャーや娯楽、旅費や雑貨への支出が収入の42%を超えるか、食費と住居費への支出が34%未満」を上限とし、その間を中間所得層と定めて調査をしました。
その結果、中間所得層は気温上昇に適応するために冷房設備を購入したり、災害時に備えて保険に加入するなどの支出が増え、贅沢品の購入や娯楽への支出が減少しているそうです。
また、気候変動に適応するために多くの人が冷房設備を整えることで消費電力が増加、二酸化炭素排出量も増加し、さらに気候変動を加速させてしまう懸念もあると指摘しています。
報告書は、「気候変動はより不安をもたらし、楽しみを減らす」と結論づけています。
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