地球が温暖化すると様々な場所でいろいろなサインが現れるという記事を以前に書いたことがあります。気温に関する現象としては、「地表と海上の気温が上昇」「対流圏の気温が上昇」というものがありました。
それとは別に、気温上昇の傾向として大半のケースで当てはまる傾向があります。
- 気温の低い「場所」ほど温暖化が速く進む
- 気温の低い「季節」ほど温暖化が速く進む
- 気温の低い「時間」ほど温暖化が速く進む
すべての場所、すべての場所における季節、すべての場所における時間でこれらの傾向が見られるわけではありません。このような傾向が見られる確率が高いと捉えてもらえばいいと思います。
今回は、この中で「気温の低い場所ほど温暖化が速く進む」というケースについて検証してみます。
気温が低い代表的な場所といえば、北極圏と南極圏です。南極は一部気温が上昇傾向にない地域もありますが、北極圏にこの「気温の低い場所ほど温暖化が速い」という特徴が顕著に現れています。北極圏は、他の地域と比較して約2倍の速さで気温上昇が続いています。
1951年から2015年までの平均気温の変化の傾向(赤が濃いほど気温の上昇傾向が強い)。Credit: NASA
この地図は、1951年から2015年までの間にどれくらい年間平均気温が変化したかを表しています。右肩の数字は、地球全体の平均気温の変化で、この期間に世界平均気温が0.89℃上昇したことになります。下のバーは、気温の上昇と低下の幅を表しています。北極圏の大部分と西南極の赤い地域は、2℃から4℃の上昇幅、濃いオレンジは1℃から2℃気温が上昇しています。この地図を見ると、高緯度地域の気温上昇の方が、中緯度や赤道などの熱帯地域と比較して速いことがわかります。
1951年から2015年までの平均気温の変化の傾向の緯度別グラフ(グラフ横軸の目盛りのマイナスは南半球、プラスは北半球)。Credit: NASA
これは、上の地図と同じデータを緯度別にグラフにしたものです。中緯度地域(北緯&南緯30度付近)は0.8℃から1℃くらい気温が上昇していますが、北半球はそこから高緯度に向かうにつれて気温の上昇幅が大きくなり、逆に南半球は南緯60度付近まで上昇幅が小さくなり、そこから上昇しています。これは、主に北半球は陸地が多く、南半球は海洋が多いことによる熱容量の違いが原因と考えていいでしょう。
1900年から2015年までの、北極圏(北緯60度以北の陸地の観測データ)と世界の年間平均気温の偏差(基準年は1981年から2010年)の比較。赤が世界平均気温、青が北極圏(北緯60度から90度)。Credit: NOAA
このグラフは、1900年から2015年までの北極圏(北緯60度以北)と世界の平均気温の偏差を比較したものです。偏差の基準は、1981年から2010年の30年間のそれぞれの平均気温です。世界平均気温が1900年から1℃ちょっと上昇しているのに対し、北極圏は2℃以上上昇しています。
このように、基本的に高緯度地域の方が、気温の上昇が速くなっていることがわかります。もちろん、最初に述べた通り、すべての高緯度地域が同じように速くなっているわけではありません。大半の地域で「気温の低い場所ほど温暖化が速い」と言えるということです。
最後に、NASAによる1880年から2015年までの地球の平均気温(5年平均)と1951年から1980年までの平均気温との偏差を表した30秒の動画を貼っておきます。1980年代後半から北極圏の気温が急速に上昇する様子がよくわかります。
Credit: NASA
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