21世紀に入ってから続いている記録的な気温の高さは、人為的地球温暖化の影響がなければほぼあり得ないという研究結果が「サイエンティフィック・レポート誌」に発表されました。
研究チームは、観測データとコンピュータによる気候システムのシミュレーションを総合して統計的分析を行いました。その結果、「自然変動」が原因で、最も平均気温の高い上位13年が2000年から2014年までの15年の間に集中して記録される確率は、0.13%から0.01%(770分の1から1万分の1)でしかないと指摘しています。
これまでにも、観測史上最も暑い上位10年が2000年以降に起こる確率が650万分の1であるとするレポートや、最も暑い13年が15年間に集中する確率は27万分の1であるとする分析結果はありました。今回の研究では、気候の影響がそれぞれの年に始まって終わるわけではなく、極端に暑い年の影響は複数年に渡って続くことを考慮に入れた結果、これまでよりも確率が高くなっています。それでも770分の1から1万分の1でしかありません。
なお、今回の研究は2015年の平均気温が確定する前に行われたため、観測史上最高の平均気温を記録した2015年のデータは加味されていません。2015年を加えると、観測史上最も暑い年の上位15年が、2000年以降に集中しています。2000年から2015年までの16年間で、最も暑かった上位16年に入っていないのは2000年だけです(1998年が6位タイ)。研究を率いたペンシルベニア州立大学の気候科学者、マイケル・マン氏は、2015年を加えた場合、この確率はさらに低くなり、30万分の1を下回るだろうと述べています。
また、研究の筆者のひとりであるポツダム気候変動影響研究所(ドイツ)のステファン・ラームストーフ(Stefan Rahmstorf)氏は、「気候の自然変動では近年の地球規模の暑さを説明することはできませんが、人為的地球温暖化であるとすると説明がつくのです。」と述べています。また、記録的な暑さがもたらす深刻な影響については、「近年の記録的な暑さが原因で、世界中でこれまで見られなかった熱波によって、悲しいことに死者も出ていますし、長期的な干ばつや山火事も起こっています。私たちの分析結果が示すように、極端な暑さによるリスクは、人間が地球のシステムに関与することで倍増しています。」と語っています。
研究は、「いくつかのメディアによるレポートよりも高い確率にはなっているが、近年観測され続けている記録的な暑さが、人為的地球温暖化なしで起こった可能性は極めて低いと指摘するには十分だ」と結論づけています。
【参照】
Mann, M. E. et al. The Likelihood of Recent Record Warmth. Sci. Rep. 6, 19831; doi: 10.1038/srep19831 (2016).
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