カリフォルニア州の水不足はエルニーニョだけでは解消しない

  エルニーニョ現象のピークは過ぎましたが、その影響がピークを迎えるのはまだこれからです。4年前から続く干ばつによって深刻な水不足に見舞われている米カリフォルニア州では、エルニーニョの勢力が最も強くなるのと合わせるように、降水量の増加が見られるようになってきました。

  カリフォルニア州にとって夏の重要な水源となるシエラネバダ山脈の積雪量は、1月下旬としては平年の115%(約47.5センチ)に達し、約5年ぶりの規模の降雪量となっています。しかし、4月1日の平均である約71センチを大きく超えるレベルに達するまでは安心できないとカリフォルニア州の水資源局は述べています

20150901_ca_trd.jpg
20160126_ca_trd.jpg


  カリフォルニア州の水不足がどれくらい解消したのかというと、上の2015年9月1日と2016年1月26日のカリフォルニア州の干ばつ地図を見る限りでは、北部で若干の改善が見られるものの、本来エルニーニョ現象の恩恵を受けるはずである南部の干ばつは解消の兆しが見えません。

  また、エルニーニョの影響で降水量が増加し始めたことでシエラネバダ山脈の積雪量が増え、湖の水位が上昇しているのは短期的に見ると明るい兆しですが、長期的に見ると干ばつの解消には程遠いと言えます。冒頭で述べたように、カリフォルニア州の干ばつは4年間にわたって深刻化してきました。エルニーニョの影響は大きいとはいえ、ひと冬の降水量の増加によって、4年間の干ばつを帳消しにできるわけがないのです。

  さらに、長期に渡って降水量の多い季節が続き、表層レベルで積雪量、川や湖の水位、そして土壌の水分が平均的なレベルまで回復したとしても、カリフォルニア州には地下水の急激な減少という大きな問題が残っています。

Cumulative groundwater loss of California 2016-01-30.jpg
1962年から2015年までの、カリフォルニア州セントラルバレーにおける累積的な地下水の枯渇(単位: 立方キロメートル)。オレンジの線(2003年まで)は米国地質調査所、緑の線はGRACE(人工衛星)によるデータ。背景の色は、青が降水量の多い時期、黄色は乾燥している時期。

  上のグラフは、カリフォルニア州セントラルバレーの地下水の枯渇状況の変遷を表しています。セントラルバレーは農業が盛んな地域で、干ばつなどによって水不足に陥ると、大量の地下水を汲み上げて利用するため、1962年以降の53年の間に約100立方キロメートルの地下水を失っています。

  このような人間活動による地下水の急激な減少が止まって、数十年前のレベルまで回復しない限り、今後気候変動によって高温で乾燥した状況が続くようになると、また同じことを繰り返すことになります。しかし、地下水は地表の水のように簡単に回復しません。浅い地下水脈の回復には数年、深くなるにつれ数十年、数世紀と、要する時間は長くなります。


  エルニーニョ現象の恩恵を最大限に受けたとしても、人間が生活様式を変えない限り、カリフォルニアの深刻な水不足は回復どころか悪化の一途を辿ることになります。

にほんブログ村 環境ブログ 地球環境へ

この記事へのコメント


この記事へのトラックバック