今年に入ってから、ジカ熱と呼ばれる蚊によって媒介されるウイルス感染症が、ブラジルを初めとするラテンアメリカの国々で流行しています。
ジカ熱の感染が確認されている国と地域(2016年1月26日現在)
Credit: CDC
上の地図の紫色の国と地域(24の国と地域)でジカ熱の感染者が確認されています(2016年1月26日現在)。WHO(世界保健機関)は、アメリカ大陸で300万人から400万人の感染者が出る恐れがあると警告していますhttp://jp.reuters.com/article/zika-americas-facts-idJPKCN0V50MQ。現在のところ、最北端はメキシコのようです。アメリカでも、流行している国や地域への渡航者が帰国後に感染していたことが判明するケースは見られますが、アメリカ国内で蚊の媒介によって感染したケースは報告がありません(アメリカ領であるプエルトリコでは蚊の媒介による感染者の報告があります)。米疾病対策センター(CDC)は、それらの国への渡航者に対して、ジカ熱への感染予防対策を呼びかけています。
ジカ熱は、高温多湿な環境を好むネッタイシマカの雌が主な媒介主になっています。感染が広がっている国では、小頭症の新生児が増加と時期が重なるため、関連性が疑われています。その影響を受け、エルサルバドルやコロンビア、エクアドル、ジャマイカでは、政府が女性に対して流行が終息するまで妊娠するのを待つように促しています。また、このネッタイシマカはデング熱や黄熱病、チクングンヤ熱も媒介しますが、現在のところジカ熱のワクチンは存在しません。
ネッタイシマカは、米南部でも生息が確認されているため、ジカ熱の流行を心配する声が大きくなってきています。米南部のフロリダ州やテキサス州をはじめとするメキシコ湾沿いの州は、一部のラテンアメリカ諸国と気候が似ているため、ジカ熱が米本土で感染するケースが出てくると予想する専門家もいます。
ジカ熱が発生・流行する可能性がある地域(オレンジは1年を通じて発生、黄色は季節によって発生)。
円は、ジカ熱が流行しているブラジルからの渡航者の数。
Credit: Bogoch et al. 2016
上の地図は、ジカ熱が最終的に到達する可能性がある地域を予想したもので、メキシコ湾岸地域だけでなく、アメリカの北東部、ニューヨークでも感染者が出る可能性があるとしています。フロリダ州南部では、ジカ熱が常在する可能性もあるようです。
ジカ熱の流行も他の蚊による感染症と同じパターンを辿るとは限りませんが、気候変動によって蚊の活動期間が長くなっていることや、蚊によって媒介される伝染病の感染地域が拡大していることは研究結果が指摘しています。
2011年から2012年にかけて、米テキサス州では同じく蚊が媒介する(蚊の種類は違いますが)西ナイル熱が大流行し、ダラスとその周辺では死者が出ました。当時のテキサス州は、観測史上まれに見る深刻な干ばつに見舞われており、水不足のために蚊が大量発生するには適さない環境だと思われていたのですが、蚊はわずかな水でも産卵から成虫まで成長するうえに、成長サイクルを短縮させてその数を爆発的に増やしました。蚊が増えるには、使われていないプールや噴水の淀んだ水、植木鉢の受け皿や空き缶、ペットボトルのキャップなどにたまったほんのわずかな水で十分なのです。
P.S. 日本にもジカ熱を媒介できる「ヒトスジシマカ」が生息しています。
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