アジア太平洋地域と東アフリカでエルニーニョによる被害が深刻化

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  ユニセフによると、ピークを迎えたエルニーニョの影響で、アジア太平洋地域の干ばつが深刻化し、農作物の不作や家畜の死、飲料水の不足に繋がっており、それらの地域の子どもたちのために、ユニセフでは6,200万ドル(約73億円)の援助を呼びかけています。

  また、国連はエチオピアもエルニーニョ現象の影響による深刻な干ばつが続いており、農家に5,000万ドル(約59億円)の資金援助が必要だと訴えています。

  エルニーニョ現象の深刻な影響が途上国の約6千万人に及ぶ可能性があることは以前に触れましたが、数ヶ月の時間差を置いてから現れるエルニーニョの影響が顕著に見られるようになってきたと思われます。

  2015年1月初旬に東ティモールを訪れた国連世界食糧計画の職員によると、11月に雨期が始まっているはずの地域の土壌が乾燥し、いくつかの地域でも河川が完全に干上がった状態になっているそうです。

  アジア太平洋地域のエルニーニョによる主な被害状況は以下の通りです。

東ティモール: 降水量が平年の50%と少なく、その影響によって一部地域で水と餌が不足し、家畜の餓死が相次いでいます。1月15日以降に降雨があり、状況は改善に向かっている模様です。

フィリピン: 国連人道問題調整部によると、ミンダナオ島のザンボアンガでは、日照りによって500ヘクタール以上の農地が干上がり、米、トウモロコシ、バナナや野菜が回復不能なダメージを受けています。同島北部のコタバトでは、農作物の被害が5百万ドル(約6億円)にのぼっています。また、4月までにフィリピンの85%が干ばつに陥ると予想しています。

パプアニューギニア: 国際移住機構によると、国民の3分の1を超える270万人が干ばつと霜の影響を受けて食糧と水が不足しており、農業の回復が必要とのことです。また、一部地域で水源の衛生管理ができておらず、直近4週間の調査では、47%が家族に下痢の症状が見られると答えています。

太平洋諸島: ユニセフによると、フィジー、トンガ、サモア、バヌアツ、パラオでは干ばつ警報か干ばつ注意報のいずれかが発令されています。また、通常よりも勢力の強いストームが頻繁に発生し、これらの地域が最も影響を受けると予測されています。太平洋諸島の子どもたちに栄養不足と脱水症状が見られ、農作物の不作による栄養失調、水不足、下水設備の不衛生が懸念されています。

北朝鮮: ユニセフの報告では、深刻な干ばつにより、農業が盛んな地域で2015年の収穫量が激減したそうです。また、清潔な水の不足が女性と子どもの健康状態に悪影響を与えています。干ばつに見舞われている地域では、約25,000人の子どもに深刻な急性栄養失調の症状が見られ、5歳未満の子どもの下痢が72%上昇しています。

  エルニーニョの影響を受けているのはアジア太平洋地域だけではありません。国連によると、アフリカ東部のエチオピアでは、干ばつの影響で農作物の収穫が50%から90%減少し、1千万人以上が食糧不足に陥っています。また、水不足は畜産業にも深刻な影響を与えています。食糧不足から、深刻な急性栄養失調の症状が見られる子どもの数は、過去最高の報告数を記録するなど、エルニーニョによる干ばつの影響はかつてない深刻さになっています。

  エルニーニョはすでにピークを過ぎており、春から初夏にかけて終息を迎える見込みですが、その影響はあと数ヶ月続くと思われ、途上国における深刻な被害のさらなる拡大が懸念されています。

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