Credit: Charlie & Melody Wambeke
このまま気候変動対策をとらずにいると、現在20年に一度の確率で起こる熱波が、2075年には世界の半分以上の場所で毎年起こるようになるという研究結果が科学誌「クライマティック・チェンジ」に掲載されました。また、同研究では、未来に起こる熱波は現在よりもさらに激しいものになると指摘しています。
研究の執筆者である米国立大気研究センター(NCAR)のクラウディア・テバルディ氏とローレンス・バークレー国立研究所のマイケル・ウェーナー氏は、NCARの気候モデルを用いて、このまま気候変動対策をとらないシナリオ(RCP8.5)の場合に、20年に一度(5%)の確率で起こる熱波の頻度と激しさが将来的にどのように変化していくかをシミュレーション解析しました。
そして、2075年には世界の半分を超える地域で、20年に一度の熱波が毎年起こるようになるという結果を得ました。地域によっては、熱波が年に2回以上起こる可能性もあり、最も熱波が起こりやすい地域は、北アメリカの北部、ヨーロッパ、アジア、そして南アフリカ中部だそうです。
しかし、もしも2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えることができるペースで温室効果ガスの排出量を削減すれば、熱波の影響を受ける地域を10%から20%に抑えることができると研究は指摘しています。
また、20年に一度の熱波が将来的にどれくらい激しいものになるかについてシミュレーションでは、2050年には地球の60%に及ぶ地域で現在よりも熱波の気温が3℃、2100年には陸地の25%を超える地域で熱波が現在よりも5℃高くなるという結果を得ました。でも、もしも二酸化炭素排出量を削減できれば、この規模の熱波が起こる可能性をゼロにできるそうです。
熱波の気温が3℃から5℃高くなると言われても、私たちのようにエアコンが普及している先進国の人間はあまり実感が湧かないかもしれませんが、世界には電気が通っていない地域も少なくなく、エアコンを持たない人たちや、特に乳幼児や高齢者、貧困層にとっては暑さを凌ぐことが困難になり、健康と命が危険にさらされることになります。先進国でも、2003年に52,000人以上の死者を出したヨーロッパの熱波は記憶に新しいところです。また、エアコンが不要だった地域が熱波に襲われると大きな被害に繋がりますし、ホームレスはシェルターがなければ熱波によって命を脅かされることになります。
私たちは、未来を選ぶことができます。熱波が少ない世界を未来に残すのか、毎年のように激しい熱波に見舞われる未来を残すのか、決めるのは私たちです。
【参照】
Tebaldi C, Wehner M (2016) Benefits of mitigation for future heat extremes under RCP4.5 compared to RCP8.5. Climatic Change. doi:10.1007/s10584-016-1605-5. http://dx.doi.org/10.1007/s10584-016-1605-5
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