Credit: Chris/flickr
世界が気候変動による壊滅的な被害を避けるために2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるには、二酸化炭素排出量をこれまで考えられてきた半分に抑える必要があるという研究結果が、科学誌「ネイチャー・クライメートチェンジ」に掲載されました。
以前に書いた記事では、2100年までの気温上昇を2℃未満に抑えるための二酸化炭素排出量の上限は1,832ギガトン(GtCO2)でした。
「炭素収支」については、様々なシナリオや計算方法、他の温室効果ガスを含めるかどうかなどによって2℃未満に抑えるための二酸化炭素排出量が違ってくるのですが、これまでの研究では、2015年以降の排出量が590から2,390GtCO2でした。今回の研究では、メタンなど他の温室効果ガスを含めて計算したところ、2100年までに排出できる二酸化炭素の量は590から1,240GtCO2と、上限が従来の約半分になることがわかりました。
研究の筆頭執筆者である国際応用システム分析研究所のJoeri Rogelj氏は、「私たちはこれまで炭素収支を50%から最大200%以上低く見積もってきました。上限では、1,000ギガトン以上の二酸化炭素排出量の違いがあります。もしも私たちが今すぐ二酸化炭素排出量の削減を始めなければ、数十年で上限を超えることになります。」と指摘しています。
今回の研究の1,240GtCO2を2015年から2100年までの86年間で世界が排出できる二酸化炭素の上限とした場合、1年あたりの排出量は約14.4GtCO2です。ここ数年の二酸化炭素排出量が約32GtCO2なので、このままのペースだと今世紀半ばには上限を超えてしまいます。
195ヶ国が合意を果たしたパリ協定の目標を達成するためには、2倍以上の速さで二酸化炭素排出量を削減しなければなりません。
今すぐ温室効果ガスの排出をゼロにしても、これまでに上昇した1℃も加えると1.66℃の気温上昇が保証されているとする研究や、今後数年から数十年の気候変動対策次第で、1万年先や数万年先の世界がどうなるかが決まるという研究結果もあり、どちらにしても、二酸化炭素排出量削減が急務であることに変わりありません。
【参照】
Rogelj, J. et al. Differences between carbon budget estimates unravelled. Nat Clim Change 6, 245–252 (2016).
【あわせて読んでほしい記事】
この記事へのコメント