アメリカで気候変動否定派が「地球温暖化は嘘」という主張をするために「最も信頼できるデータ」として使う衛星によって観測された気温データによると、衛星による気温の測定を始めた1979年以降、最も暖かい2月になりました。これにより、気候変動を否定するために衛星のデータを利用してきた米共和党の議員たちは、新たな「最も信頼できる気温データ」を探さなければいけなくなってしまいそうです。
1979年から2016年2月までの衛星(UAH)による対流圏下部の世界平均気温の偏差(赤い線は13ヶ月平均。偏差の基準は1981年から2010年)
Credit: Roy Spencer
2016年2月の偏差の大きさは一目瞭然です。1981年から2010年までの平均気温との+0.83という偏差は、衛星による気温データの測定を開始した1979年以降で最も大きな値となりました。様々な問題と不確かな要素のために地表での測定と比較して気温が低めになってしまう衛星のデータですらこれだけの異常な暖かさを記録したことに注目が集まっています。
衛星の気温データを発表しているアラバマ大学ハンツビル校のロイ・スペンサー氏は、エルニーニョがこの偏差の大きさの原因のひとつであるとしながらも、同じくエルニーニョの2年目だった1998年と比較して熱帯地域の偏差が小さく、さらに+1.46℃という異常な北半球の陸地の偏差をエルニーニョだけでは説明できないとし、他にも要因があるのではないかと自身のブログで述べています。
エルニーニョは昨年の(2015年)11月から12月にかけてピークを迎えましたが、その熱が大気に伝わって対流圏の気温が上昇するまでにタイムラグが発生するため、2月の平均気温の偏差が極端に大きな値を示したこと自体には驚きはありません。これで、12月から3ヶ月続けてそれぞれの月の史上最も大きな偏差を記録したことになります。
衛星による気温測定の信頼性がまだ高くないこともありますが、それ以前に私たちが生活しているのは空ではなく地表なので、衛星のデータではなく地表の気温データに注目するべきで、衛星のデータは、地表で観測不可能な地域(北極と南極や海洋、人が生活していないために測候所が設置されていない地域など)のデータを補うための材料にすればいいと思います。
衛星による観測データでもこれだけの気温上昇が確認されたことで、石油産業から多額の献金や選挙資金を受け取って気候変動否定論を展開し、現在は大統領指名候補レース中のテッド・クルーズ氏など、これまで衛星のデータを地球温暖化を否定するために利用してきた米共和党議員の今後の発言が注目されるところです。
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