米議会の委員会等で、共和党の大統領指名候補であるテッド・クルーズ氏が「最も信頼できるデータ」として温暖化を否定する根拠としてきた、衛星によって気温を観測するリモート・センシング・システム(RSS)のデータに補正をかけたら、従来よりも10年あたりで0.047℃気温が上昇していたとする研究結果が、米国気象学会の科学誌「ジャーナル・オブ・クライメート」に掲載されました。
1979年以降のRSSによる対流圏中央の気温。黒い線が補正前、水色の線が補正後の気温。グラフ上部の緑の線は補正前と補正後の差(補正後-補正前)。
Credit: Guardian
RSSは、アラバマ大学のUAHと同じ衛星のデータを用いて気温を推測しているのですが、アラバマ大学のジョン・クリスティ氏によると、RSSの従来の方法は気温が低めに計算される問題を抱えていたそうです。今回の研究でそれらの点が補正されたことによって、10年あたりの気温上昇がこれまでの+0.078℃から+0.125℃となり、UAHの対流圏中央の+0.072℃よりもかなり高く、これまでかけ離れていた米海洋大気局(NOAA)の+0.15℃(地表)に近づきました。
これまで、RSSの衛星データを用いて温暖化を否定してきたテッド・クルーズ上院議員が、今回の研究結果を受けてどのような発言をするかに注目が集まっていますが、テキサスA&M大学の気候科学者であるアンドリュー・デスラー氏は、「クルーズ氏たちがどうするか現時点ではわかりませんが、『衛星のデータによると温暖化はしていない』と主張するのは難しくなってきていると思います。でも、『著しい温暖化は見られない』と言う可能性はあるかもしれません。」とコメントしています。
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【参照】
Mears, C., and F. Wentz, 2016: Sensitivity of satellite-derived tropospheric temperature trends to the diurnal cycle adjustment. J Climate, 160301131123001, doi:10.1175/JCLI-D-15-0744.1.
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