米で竜巻の多発する頻度が増加、激しさも増すという研究結果  現在のところ原因は不明

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                      Credit: NSSL


  竜巻は、最も大きな被害をもたらす気象現象のひとつです。通常、アメリカでは春から秋にかけて竜巻が発生しやすいため、「トルネードシーズン」と呼んでいますが、ハリケーンと違い、時期によって頻度の差はあっても竜巻は1年を通して発生しています。

  2011年には、アメリカからカナダにかけて363個の竜巻が発生し、死者350人以上、110億ドル(約1兆2千億円)の経済被害をもたらしました。

  研究では、1954年以降の竜巻のアウトブレークを分析したところ、2011年のようなアウトブレークが発生する頻度と、一度のアウトブレークで周辺地域において発生する竜巻の数が増加し(10個から15個に増加)、発生する竜巻の強度(竜巻の強さを示す改良藤田スケールの等級)も増しているという結果が出ました。

  執筆者のひとりであるマイケル・ティペット氏は、これらの結果の原因については現在のところ不明であるとし、気候変動との関係についても、気温が上昇すれば大気は竜巻が発生しやすい状態になることや、温暖化すると極端な気象現象の発生頻度とその激しさが増すという特徴を今回の研究でも示していると指摘しながらも、まだ科学的な関連性は見つかっていないと述べています。

  まず、竜巻の発生する明確な条件がいまだに解明されていないのが、大気の状態が竜巻を発生させやすくなっているはずなのに温暖化との関連性がわからない原因のひとつであると思われます。基本的には、サンダーストームが発生する条件が揃えば竜巻も起こりうるのですが、同じ条件が揃っても竜巻に発達する(タッチダウンする)こともあれば、竜巻にならずにただのサンダーストームで終わることもあるため(こっちの方が多い)、現段階の科学では「たぶん温暖化と関係があると思うんだけどなぁ」くらいで止まっています。

  でも、今回の研究結果を反映しているような出来事はすでに起こっています。トルネードシーズンとは呼べない2月にアメリカで発生した竜巻の数が観測史上最高を記録しました。

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1991年から2010年までのアメリカにおける2月の平均竜巻発生数
Credit: NOAA

  米海洋大気局(NOAA)によると、アメリカで2月に発生する竜巻の平均は29個(1991年から2010年)なのですが、今年の2月は米南東部の6州にまたがって2倍近い53個の竜巻が発生し、2月としては1950年以降で最高の発生数になりました。

  エルニーニョによって大気の状態が変わっていることも原因のひとつであると考えられています。エルニーニョ発生時には東太平洋の海水温が上昇し、温かく湿った空気を亜熱帯ジェット気流がメキシコ湾沿岸の州に運んでくることによって、平年よりも竜巻が発生しやすい状態になるためです。

  今回の研究以外にも、気温上昇に伴って竜巻が発生する日数は減少しているが、発生した日の竜巻の数の合計は増加しているという研究結果や、最も竜巻が発生する時期が早くなってきているという研究結果もあり、気候変動との関連性があるのではないかと考える科学者もいるのですが、先ほども述べた通り、竜巻の科学の複雑さからまだ明確な繋がりは見つかっていません。

  それに、これは竜巻に限らずハリケーンや干ばつ、熱波や洪水など他の極端な気象現象についても言えることですが、もしも仮に「温暖化と竜巻に明確な関連性がある」ことが研究でわかったとしても、「個別の竜巻が温暖化によって発生した」と言い切ることはできないでしょう。それは、NOAAが発表しているレポート「気候から読み解く異常気象」などを読めば明らかです。

  でも、「個別の気象現象の原因が温暖化である」と言うことはできませんが、「気温が上昇したことで以前とはまったく違う状態になっている大気がすべての気象現象に影響を与えている」と言い切ることはできます。

【参照】
Tippett, M. & Cohen, J. Tornado outbreak variability follows Taylor/’s power law of fluctuation scaling and increases dramatically with severity. Nat Commun 7, 10668 (2016).

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