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アメリカの化学系事業者団体の米国化学工業協会と、同団体に所属する化学薬品大手であるダウケミカル、デュポン、BASF、3M、ハニウェル、コーク産業、モンサント社などが、米有害物質規制法を弱体化させるために、2015年だけで5500万ドル(約62億円)を投じ、企業活動に有利になるよう議員にロビー活動を行っていたことが、米環境保護団体「エンバイロメンタル・ワーキング・グループ(Environmental Working Group。以下EWG)」の調査でわかりました。また、これらの企業を含む化学産業は直近4年間で総額2億4千5百万ドル(約277億円)のロビー資金を投入していたそうです。
EWGが米議会に提出された書類を調査したところ、これらの企業や事業団体のロビー資金が米有害物質規制法(TSCA)と化学品安全関連に集中していることが判明しました。EWGの分析によると、化学産業がTSCAを見直させるために過去4年間で少なくとも2億2千百万ドル(約250億円)のロビー資金を注ぎ込んでいました。
また、その他にも、アシュランド、セラニーズ、ダウ、デュポン、イーストマン、エコラボ、モンサントの化学薬品大手7社は、化学産業に有利なTSCAの改正法案を作成させるのために、2015年だけで2500万ドル(約280億円)近くをロビー資金に充てていました。
これらの企業の中でも、モンサント社は、1979年に使用が禁止された有害物質であるポリ塩化ビフェニル(PCBs)による健康被害の補償や、ワシントン州シアトルをはじめとする自治体からPCBsに汚染された地域の除染費用を求めて訴えられていることもあり、それらの法的責任から逃れるために、2015年6月以降にTCSAの改正法案に過去の環境汚染がもたらした被害から免責される条文を入れるよう、約200万ドル(約2億2千6百万円)を投入し、積極的なロビー活動を展開しています。
想像はつくと思いますが、これらの企業は米共和党との結びつきが強く、現在は上下院とも共和党が過半数を占めていることもあり、法案が両院を通過してオバマ大統領が署名すれば成立してしまいます。本来ならば、PCBsなどの有害物質を規制するのは米環境保護庁(EPA)の役割であるべきなのに、EPAが一切関与することなく、一部の多国籍企業が豊富な資金力を使って法案を有利に書き直させるなど許してはいけない行為のはずなのですが、資本主義社会では、有害物質による環境汚染や健康被害よりも企業の利益が優先されてしまうのです。
もう少し範囲を広げて考えると、もしもTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が施行された場合、現在の曖昧な環境関連条項のままでは、協定を結んでいる日本を含めたアメリカ以外の国でもこのような問題が起こる可能性を否定できないと思います。
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