【NASA】 2016年2月の世界平均気温が観測史上最高を記録

  米航空宇宙局(NASA)の発表によると、2016年2月の世界平均気温は、同月として観測史上最高を記録しました。NASAのデータでは、2015年10月から5ヶ月連続でそれぞれの月の観測史上最高記録を更新したことになります。

Global Monthly Mean Surface Temperature Change Metorologixal and lan-and-ocean.jpg
1996年以降の世界平均気温の偏差(偏差の基準は1951年から1980年。単位: ℃)。黒い実線(先端の矢印はそれぞれの月)は測候所のみのデータ、赤い破線(先端の丸はそれぞれの月)は、陸地と海洋の総合データ。
Credit: NASA

  上のグラフは、1996年以降の世界平均気温の偏差を表したもので、黒の実線は測候所のみ、赤い破線は、陸地と海洋のデータを合わせた平均気温の偏差になっています。右端の黒線の矢印が2016年2月の測候所のみのデータを基にした世界平均気温の偏差で、同じく赤い破線の丸印が2016年2月の陸地と海洋を合わせた世界平均気温の偏差です。公式な世界平均気温は、陸地と海洋を総合した赤の破線の方になります。右端の赤い丸印を見れば一目瞭然ですが、観測史上最高記録だった2016年1月の+1.14℃を大きく上回り、2月の偏差は+1.35℃と、とんでもない新記録になりました。

NASA GISS Global Temp Anomaly Map 2016-02 Robinson.png
2016年2月の世界平均気温の偏差を表した世界地図(偏差の基準は1951年から1980年。単位: ℃)
Credit: NASA

  上の地図は、世界各地の平均気温の偏差(基準は1951年から1980年)を表しています。1月と同じく、北極圏の気温の高さが目立ちますが、1月と大きく異なるのは、ロシアと東欧、北欧が異様に暖かいことです。

  これは、緯度別の偏差のグラフを見るとより明らかです。

NASA GISS Global Temp Zonal Graph 2016-02.png
2016年2月の世界平均気温偏差の緯度別グラフ(基準は1951年から1980年。Zonal Meanの単位は℃。グラフ横軸の目盛りのマイナスは南半球、プラスは北半球)
Credit: NASA

  北極圏だけでなく、中緯度地域(北緯30度)以北の偏差が大きくなっています。1月のグラフと並べて見ると、違いがよくわかります。

NASA GISS Global Temp Zonal Graph 2016-01.jpgNASA GISS Global Temp Zonal Graph 2016-02.jpg

  左が1月、右が2月です。北半球を見ると、1月は北緯60度近くまで偏差が約1℃で、それよりも高緯度の地域で気温が急上昇しているのに対し、2月は北緯15度過ぎあたりから平均気温が上昇し始め、中緯度地域の広い範囲で気温が高くなっており、それが2月の平均気温を押し上げた大きな要因となっています。

  昨年(2015年)の10月以降、それぞれの月が過去最高の平均気温を記録しているので、当然のことながら、世界は観測史上最も暖かい「冬(12月から2月)」を過ごしたことになります。

  これまでずっと低めの値を算出してきた衛星によるデータでも、2月の世界平均気温の偏差が+0.83℃と観測史上最高を記録していたため、今回のNASAのデータでも観測史上最も暖かい2月になったのは予想通りだったのですが、この+1.35℃という偏差の大きさには驚きました。

  産業革命前から、NASAが偏差を算出するための基準年としている1951年から1980年までの気温上昇は約0.3℃です。そこからの偏差が+1.35℃なので、すでに世界の平均気温は産業革命前から1.65℃上昇しているということになります。パリ協定では2100年までの気温上昇を1.5℃未満に抑えるという努力目標を定めましたが、この気温が今後も続いて、大気中の二酸化炭素を回収する技術を開発できない場合、努力目標の達成はすでに不可能です。

  しかし、温暖化の深刻さはあくまでも長期的な傾向で判断するので、特定の月の平均気温がそれ以前よりも極度に高くなったからといって必要以上に大騒ぎしなくてもいいのですが、それでも2月のこの偏差は騒いでしまうくらいの大きさでした。ただ、気温へのエルニーニョの影響がピークを迎えていると思われるので、今後は落ち着いていくと予想しています。

  この異常な暖かさは、エルニーニョの影響を受けているためでもありますが、それだけでこの極端な気温上昇を説明することはできないため、大部分がバックグラウンドで進行している温暖化によるものと考えていいでしょう。

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