北極の多年氷(海氷)が激減

  北極の海氷面積が長期的に減少傾向であることについては、比較的頻繁に話題になります。最近では、2月の海氷面積が観測史上最小を記録したことをこのブログでも取り上げたばかりです。

  また、以前に海氷面積の話題で氷齢について少し触れたことがあります。

  北極の海氷には、冬の間に凍って、夏を越すことなくとけてしまう氷と、1回以上の夏を越して複数年を経過した氷(多年氷)があります。当然のことですが、長い時間凍っていればそれだけ氷は厚くなり、その地域の海氷の面積と体積が増加します。分厚くなればなるほど氷は割れにくく、とけにくくなり、薄くなるほど気温が上昇するととけやすくなります。氷がとけやすくなると、それだけ明るい表面が減って暗い表面が増え、より太陽エネルギーを吸収することでさらに氷がとけやすくなるループに陥ってしまいます。

  近年の海氷面積の縮小と同じように、北極で多年氷の面積もまた小さくなってきており、それが海氷のとけやすさに繋がっているため、懸念が広がっています。

Arctic multiyear sea ice from Arctic Report Card.png
(上)北極における氷齢ごとの海氷面積(各年の3月の平均海氷面積)の割合。(左下)1985年3月の北極における氷齢ごとに色別で海氷を表した地図。(右下)同2015年3月の地図。Credit: NOAA

  上のグラフは、1985年から2015年における北極の海氷面積(3月の平均海氷面積)が氷齢ごとにどのような割合になっているかを示したものです。1985年には約20%あった氷齢4歳以上の多年氷が、2015年には約3%まで減少しています。

  これを下の地図で確認すると、氷齢3歳以上にあたる黄色とオレンジの部分が、1985年から2015年にかけて激減していることがよくわかります。そして、これらの多年氷はグリーンランドの北とカナダ北極諸島付近に集中しており、その他の地域の海氷は大変とけやすくなっています。

  1990年から2015年までの海氷面積の変化を、氷齢ごとに色分けしてある動画を見ると、時系列に沿って氷齢の高い多年氷がどのように減少しているのか、北極のどの地域の氷がとけやすくなっているのかを確認することができます。


  温室効果ガスの排出を止めない限り、今後も温暖化は続きます。もしも今すぐ温室効果ガスの排出をゼロにしても、気温上昇がすぐに止まるわけではありません。気温が上昇すればするほど、北極の多年氷は減少し、海氷面積の縮小を加速させることになり、それが北極圏のさらなる温暖化に繋がります。

  そして、北極の温暖化の影響は北極圏内にとどまることはなく、中緯度地域で熱波や大雪などの極端な気象現象の原因になっていると考えられています。

  北極で起こっていることは、私たちの生活と密接な繋がりがあるのです。

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