2030年までに気温が2℃上昇する可能性があるという研究結果

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                   Credit: FreeImages.com/Keith Syvinski


  この研究では、長期的な経済成長と人口増加に加え、従来の研究では取り入れられていなかった人口ひとりあたりのエネルギー量の需要をモデルに組み込んで気温の変化をシミュレーションしたところ、「パリ協定」で2100年までの気温上昇の目標になっている産業革命前からの2℃未満は2030年までに、努力目標である1.5℃未満は2020年までに達成不可能になってしまうという結果が出たそうです。

  研究チームによると、経済成長に伴って、1950年と比較してひとりあたりのエネルギー消費量が倍増しており、経済成長を過去60年の平均である3.9%、人口が90億人に増加すると仮定した場合、ひとりあたりのエネルギー消費量は2050年までに6倍になるそうです。そして、この消費量の増加を効率化によって相殺することは不可能だと指摘しています。

  このエネルギー消費量の増加は、1日2.5米ドル(現レートで約280円)以下で暮らしている世界の貧困を50%軽減するために必要であり、社会はこれまで貧困を生んできた化石燃料を引き続き使うのか、再生可能エネルギーに急速に転換し、その経済効果によって貧困を減らし、同時に温暖化を緩和させるのかという選択を迫られていると研究者は述べています。

  また、研究者たちは解決策として、現在世界で税控除や公共投融資などの形で化石燃料産業に与えられている年間5000億ドル(約55兆8千億円)の優遇措置を中止し、それを再生可能エネルギーに回せば、急速な転換を果たすことができると提案しています。

  最終的には、政治次第です。どの産業を優遇するのか、どれくらいの規模の税制優遇を与えるのかを、すべて政治が決めていきます。アメリカの場合、現在は米上下院を石油産業から多額の献金を受け取っている共和党が支配しているため、石油産業への年間数十億ドルの税控除を廃止することができず、連邦レベルでも州レベルでも、石油産業によるロビー活動の影響を受けて再生可能エネルギーの成長を妨げる政策を採ろうとしています。

  世界で最も利益を出している、裕福な石油産業の豊富な資金による生き残りをかけた抵抗はこれからもっと強くなるはずです。政治は、数十年、数百年単位の長期的な損失を避けるために機能しません。政治家は次の選挙に当選するために短期的な政策に注力します。企業(この記事の場合は石油産業)が短期的な利益を得ることを目的としている以上、その影響を大きく受ける議員、議会が温暖化による未来の被害を避けたり低く抑えるための機能を果たすのは難しいと思います。

  それでも、長い目で見れば化石燃料は生き残ることはできないでしょう。世界的な「脱化石燃料」の動きが止まることはないと思います。問題は、その動きが十分な速さで進むのかどうかです。

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【参照】
Wagner L, Ross I, Foster J, Hankamer B (2016) Trading Off Global Fuel Supply, CO2 Emissions and Sustainable Development. Plos One 11: e0149406. doi:10.1371/journal.pone.0149406.

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