極端な気象現象と気候変動の関連性がより明確になってきたという研究結果

  気象現象の種類によって違いはあるものの、温暖化が進めば極端な気象現象が増加し、激しさや強さが増すということは、これまでの研究結果で明らかになってきており、米海洋大気局(NOAA)が2012年から毎年発表している「気候から読み解く異常気象2014年度版」では、世界で起こった熱波や寒波、干ばつや山火事、豪雨や洪水などと気候変動との関係を分析するなど、この分野の研究は活発になってきています。

  今回、NOAAに続いて全米科学アカデミー(NAS)が、極端な気象現象と気候変動の関連性を分析した「Attribution of extreme weather events in the context of climate change(気候変動を背景にした異常気象の原因)」を発表し、気候科学の進歩によって、ある特定の異常気象が「気候変動によってどれくらい起こりやすくなっていたのか」や「気候変動が原因でどれくらい激しさや強さが増したのか」など、人為的気候変動の寄与の度合いを説明することができると結論づけています。

  被害の規模が大きな異常気象が起こると、「気候変動が原因なのか?」という質問をよく見聞きしますが、この質問に対する答えは「いいえ」しかありませんし、今後気候科学が発展してより不確かな部分が小さくなったとしても、その答えは変わりません。気候変動によって大気が以前とはまったく違う状態になっているため、すべての気象現象に多かれ少なかれ気候変動が影響を与えていると言うことはできますが、エルニーニョや北極振動などの自然変動、灌漑システムやダム、河川の堤防、土地利用などの人間活動等、様々な要因が絡んでくるため、原因が気候変動だけというのはあり得ないのです。

  しかし、今回の研究によって、ある極端な気象現象について、例えば「気候変動が原因で熱波が3倍起こりやすくなっていた」、「気候変動がストームを30%強くした」という説明が今後は可能になってくると思います。温暖化している状態(現在の二酸化炭素レベル)で起こった特定の異常気象の観測データと、気温が上昇していない世界(産業革命以前の二酸化炭素レベル)でその異常気象が起こる確率や規模の大きさ、強さを比較することで、温暖化がどれくらいその極端な気象現象に影響を与えたのかを結論づけることができるのだそうです。

  でも、すべての異常気象と気候変動の関連性を同じレベルの確かさで結論づけることはできません。

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Credit: NAS

  上の図は、極端な気象現象の種類ごとにどれくらい気候変動の影響があると言えるのか、その確かさのレベルを表したものです。横軸はその気象現象に気候変動が与える影響の理解がどのくらい進んでいるかを、縦軸はその気象現象を気候変動が原因であると特定する能力にどれくらい自信があるかを表しています。この図を見ると、気温に関連づけられる寒波と熱波、単純な大雨については気候変動との関連性を特定することが比較的容易ですが、竜巻や大型の台風やハリケーン、冬の嵐などの、気温だけではなく大気の対流や水蒸気が複雑に絡み合ってくる気象現象や、人間が原因を作りやすい山火事(野火)などは気候変動と関連づけるのは難しいと研究は指摘しています。

  この分野の研究はまだ始まったばかりと言ってよく、今後観測データの蓄積と気候モデルの進化によって、より速くより正確な分析が可能になっていくと思われます。そうすれば、気候変動の影響を今よりも身近に感じることができるようになり、小さなコミュニティから市、州(日本の場合は都道府県レベル)、国、さらに世界規模で極端な気象現象に適応する手助けになると思います。

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【参照】
National Academies of Sciences, Engineering, and Medicine. 2016. Attribution of Extreme Weather Events in the Context of Climate Change. Washington, DC: The National Academies Press. doi: 10.17226/21852.

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