東南アジアの熱帯雨林の乱開発や泥炭地の野焼きによる大規模な火災、違法な低賃金による労働力の確保、児童労働、先住民の迫害、熱帯雨林を生息地にしているオランウータンなどの動物を絶滅の危機に追い込むなど、その栽培から小売販売までのいわゆるサプライチェーンの深刻な環境正義問題を指摘されているパーム油のことは、以前に取り上げました。
このような問題をなくしていくために、「持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)」という、新たに熱帯雨林を伐採せずにパーム油を生産するための認証システムがあるのですが、このシステムを通して生産されているパーム油はわずか20%しかなく、問題解決には程遠い状態です。
では、パーム油を使用した製品を販売している企業は、サプライチェーンから環境正義問題を排除するための努力をどこまで徹底しているのでしょうか?
環境保護団体のグリーンピースによる、「森林破壊ゼロ」を掲げてパーム油を使用した商品を販売している大手多国籍企業14社を対象にした調査結果「Cutting Deforestation Out Of Palm Oil(パーム油から森林伐採を切る)」では、生産者の特定や情報公開、業界のシステム転換に依然として問題が見られ、「森林破壊ゼロ」達成にはさらなる努力が必要と指摘しています。
調査対象の企業は、コルゲート・パーモリーブ、ダノン、フェレーロ、ジェネラル・ミルズ、イケア、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ケロッグ、マーズ、モンデリーズ、ネスレ、オークラ、ペプシコ、P&G、ユニリーバの14社です。
これらの企業に対して行ったパーム油のサプライチェーンに関する以下の3つの項目への回答をグリーンピースが採点し、それぞれの企業の取り組みに評価を下しています。
・責任ある調達
新たに森林を開発して生産されたパーム油を購入しないために、誰がどのような方法で、どのような労働環境で栽培・収穫・加工したのかを明確にする具体的な段階を踏んでいるかどうか。
・透明性
パーム油の供給元の情報や、供給者が「森林破壊ゼロ」を達成するためにそれぞれの企業がどのような取り組みをしているのかなどについて、すべての情報を公開しているかどうか。
・他社と協調した業界改革
自社だけでなく、パーム油をインドネシアで調達している他社と協調して、「森林破壊ゼロ」を達成するための抜本的改革に取り組んでいるかどうか。
グリーンピースによるパーム油を使用した製品を販売している企業の「森林破壊ゼロ」のための取り組みを評価した採点表。赤が濃いほど低評価、緑が濃いほど高評価。PDFに各企業に対する評価の詳細が記載されています。
企業からの回答を分析した結果、フェレーロだけがほぼ100%パーム油の製造元までサプライチェーンを遡ることができ、全体として高い評価を得ましたが、ペプシコ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、コルゲート・パーモリーブは最低の評価を受けています。
全体としては、まだまだ解決しなければならない問題はあるものの、「森林破壊ゼロ」に向けて前進はしているという評価でしたが、現段階で順調に必要な努力を重ねているのはフェレーロとネスレだけのようです。
わずか20%しかカバーされていないRSPO経由のパーム油ですら製造元を特定できないケースがほとんどなので、インドネシアで栽培・収穫・生産されるパーム油の環境正義問題を解決するまでに、まだまだ長い道のりが待っているのは間違いありません。
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