Credit: UNHCR
ここ数年で「気候難民」という言葉を頻繁に耳にするようになってきました。2014年には、ツバルの家族が世界で初めて気候難民として認められ、話題になりました。アメリカでは、つい最近海面上昇によって侵食が進み、島に住み続けることが困難になったルイジアナ州の先住民コミュニティが、米本土初の気候難民として移住するための資金を連邦政府から獲得しました。
ニュージーランドが2014年にツバルの家族を気候難民と認めた際にも、その家族がすでにニュージーランドに生活の基盤を置いていたことなどから、それが前例となって積極的に気候難民を受け入れるわけではないと述べていたとおり、昨年(2015年)には、ニュージーランドに気候難民として移住を希望していたキリバスの男性が、申請を却下され、本国に送還されました。
以前から、海抜が低い島しょ国を中心に気候難民が増えるのは確実視されてきましたし、将来的に増えるのは間違いないと思います。
それを反映するように、今回、新たにツバルの男性が気候変動を理由に難民としての移住をニュージーランドに申し立てました。ニュージーランドでは、この男性による難民申請が直近5年間で11件目になるそうです。
男性は申し立ての理由について、気候変動による本国の経済の衰退、社会情勢の悪化、就職難、医療と教育のレベルの低さなどを挙げ、配偶者と子どもたちをそのような環境の場所に戻すのは公正に欠けると主張しています。
9つの島からなる、人口わずか1万1千人のツバルは、標高が最も高い場所でも4.6メートルしかなく、高潮の際には島の内陸部まで浸水し、建造物だけでなく、井戸水が飲めなくなったり、農作物の栽培ができなくなるなど、気候変動は生活に深刻な影響を与えています。
南太平洋の島しょ国の中には、将来的にニュージーランドやオーストラリア、同じ南太平洋の島しょ国でも海抜が高いフィジーなどに移住を希望する国もありますが、受け入れ先を見つけるのは容易ではありません。
本来ならば、後発開発途上国の国民が気候変動の影響を受けて移住を余儀なくされる場合、その原因を作り出してきた先進諸国に倫理的責任があるはずなのですが、2015年にパリで開催された「国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)」では、気候難民問題はトピックにすらならず、ロス&ダメージについてもパリ協定の中で明記はされましたが、補償などの具体的な内容には一切触れられていません。
気候難民の問題は、気候変動の影響を受けている人たちが自力で解決することはできません。その周辺国による気候難民の受け入れに期待するのも間違っています。最も深刻な影響を受ける気候弱者の要望が最大限に反映される形で、国際社会が協調してルールを定め、対応していかなければならない問題なのです。
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