気候変動の向こう側

  米ジョージメイソン大学が米国気象学会の会員に対して行ったアンケート調査によると、95%以上が気候変動は現実に起こっていると回答しました。また、80%以上がその原因の半分以上が人間活動であると答えています。

  グラフを交えながら、アンケート調査の主な質問と回答を挙げていきます。

・全体の96%が気候変動は現実に起こっていると回答。起こっていないと答えたのは1%で、3%がわからないと回答。

・「気候変動が起こっている」と答えた会員のうち、58%が極めて確信（Extremely sure）している、31%がとても確信している（Very sure）と回答。確信はないと答えた人は0%。

・「気候変動は起こっていない」と答えた人のうち、13%が極めて確信（Extremely sure）している、43%がとても確信している（Very sure）、ちょっとだけ確信している（Somewhat sure）と回答。確信はないと答えたのは6%。つまり「確かではないけど気候変動は起こっていないったら起こっていない」と言い張っている人が6%。

・過去50年間で起こった気候変動の原因について、29%が大部分（81%から100%）は人間活動にあり、大半（60%から80%）が人間活動と答えた人は38%、半分は人間活動に原因があるという回答は14%と、半分以上は人間活動に起因すると答えた人が80%超え。一方で、大半（60%から80%）が自然現象と答えたのは7%、5%が大部分（81%から100%）は自然現象に起因すると回答。興味深いのは、「過去50年間気候変動は起こっていない」と答えた人が1%いること（回答数が4004人なので、約40人はなにがなんでも気候変動を否定していると考えられる）。

・「今後50年間に世界規模で適応策を採ることでどれくらい気候変動の進行を回避できるか」という問いに対して、85%が少し（A small amount of additional climate change）かそれ以上（moderate/large/almost all）の進行を妨げることができると答えたのに対し、ほぼ回避できないが9%と回答。「そもそも今後50年で気候変動は進行しない」と答えた人が1%。おもしろいやないか。

・「過去5年間で気候変動に対する意見／立ち位置が変わったか？」という設問に、変わったと答えた人が17%。そのうちの87%が「人為的気候変動が起こっていることをさらに確信した」と回答。13%は「人為的気候変動が起こっている確信を失った」と回答。

・過去50年間で自身の居住地域の気候が変わったと答えた人は74%で、4%がだいたい良い影響が出ていると答え、75%が少なくとも半分、若しくはそれ以上の悪い影響が出ていると回答。

・今後50年間で自身が居住する地域の気候変動が進むだろうと回答した人は78%で、そのうち2%が良い影響が出るだろうと答え、79%が少なくとも半分、若しくはそれ以上の悪い影響が出るだろうと回答。

   このアンケート結果を伝える記事等では「気象学者の95%以上が・・・」という見出しや内容になっていたので、上に挙げた質問に対する回答で気候変動を否定する気象学者がいることに不思議な印象を持ったのですが、よく考えてみると「米国気象学会」の会員になることができるのは、気象学者と聞いたときに浮かぶ「気象学の学位保持者」と「大気科学の学位保持者」だけではないんですよね。

  気象学（MET=Meteorology）と大気学（ATM SCI=大気科学）以外にも、エンジニアリングや教育学などの学位保有者も会員としてアンケートに回答していることを考慮に入れるとこのような結果も納得できます。

  さらに納得させられたのがこの回答でした。

  自身が気候科学のエキスパートであると答えた人は全体の37%で、57%がそうではないと回答しています。また、気候変動は科学的知識よりも政治的立ち位置やイデオロギーによって意見が左右されやすいため、教育レベルや学位などは関係なくその存在を否定する人がいてもおかしくありません。

  しかし、逆にそれでも96%が気候変動を現実に起こっていると考えていることが、気候変動の進行を表しているような気もします。

【あわせて読むといいかもしれない記事】

◆ 気候科学者と一般市民の人為的温暖化に対する認識の差

◆ 温暖化を心配するアメリカ人が著しく増加

【参照】

Maibach, E., Perkins, D., Francis, Z., Myers, T., Englbom, A., et al. (2016) A 2016 National Survey of American Meteorological Society Member Views on Climate Change: Initial Findings. George Mason University, Fairfax, VA: Center for Climate Change Communication.